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日外会誌. 91(1): 36-46, 1990


原著

Double staining 法による胃癌所属リンパ節リンパ球の機能的サブセットの解析

岡山大学 医学部第1外科教室(主任:折田蕉三教授)

丁野 真太郎

(1988年6月17日受付)

I.内容要旨
胃癌所属リンパ節リンパ球の免疫学的抗腫瘍能を検索する目的で,T細胞およびNK細胞に対する数種のモノクローナル抗体と蛍光抗体法を組合わせたdouble staining法を凍結組織切片上で行い,各種免疫担当細胞サブセットの分布動態を検討した.
double stainingは次の組合わせで行った.OKT8(以下CD8)とLeu15(以下CD11b),Leu3a(以下CD4)とLeu8の組合わせでT細胞系のより詳細な機能的サブセットの分布を,CD8とOKT9,CD8とOKIa1,CD4とOKT9,CD4とOKIa1の組合わせで活性化T細胞の分布を観察検討した.また,Leu7とLeu11c(以下CD16)の組合わせで異なるNK活性をもったNK細胞の分布をみた.
対象は転移陰性リンパ節を用いて,インターロイキン-2(以下IL-2)あるいらOK-432を術前,経内視鏡的に腫瘍内局所投与した2群と,非局注群に分け,転移陽性リンパ節群,対照群(良性疾患)の各群について比較検討した.
CD8細胞のうちCD11b細胞(サプレッサーT細胞)はわずかで,ほとんどがCD11bであり細胞障害性T細胞と判定された.また,各群の間に差はみられなかった.
CD4細胞のうちLeu8細胞(サプレッサー・インデューサーT細胞)とLeu8細胞(ヘルパーT細胞)はほぼ同数で,互いに混在して認められた.OK-432局注群でCD4Leu8/CD4の比率に増加傾向がみられた.
CD8細胞あるいはCD4細胞に占めるOKT9あるいはOKIa1の活性化T細胞の比率は数%以下で,少数であった.IL-2局注群でCD4OKT9/CD4の比率に,OK-432局注群でCD4OKIa1/CD4の比率に増加傾向がみられた.また,転移陽性群でCD4OKIa1/CD4の比率に増加がみられた.
Leu7とCD16のdouble stainingではLeu7CD16細胞は認められず,一部の転移巣内にNK活性が強いとされるLeu7CD16細胞がみられた.
以上より,胃癌所属リンパ節は潜在的抗腫瘍能を保持しているが,十分にその機能を発揮していないものと考えられた.
また,IL-2あるいはOK-432の術前腫瘍内投与はCD4細胞の活性化を誘導することが示唆された.

キーワード
胃癌所属リンパ節, 免疫組織学, モノクローナル抗体, 蛍光抗体法, double staining 法


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