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日外会誌. 91(1): 47-51, 1990


原著

胃癌患者の術前胃酸分泌能と予後

東海大学 医学部第2外科

生越 喬二 , 岩田 邦裕 , 原 俊介 , 近藤 泰理 , 三富 利夫

(1988年12月12日受付)

I.内容要旨
胃生理機能としての胃酸分泌能が胃の粘膜に発生する癌の病態にいかに関与し,遠隔成績に影響を及ぼしているかを検討することを目的として,胃癌切除例316例を対象として術前に胃液検査を行ない,細胞性免疫能(皮膚皮内反応(PPD,PHA,SUPS),リンパ球サブセット),血中糖蛋白(CEA,TPA,IAP,ASP,α1-ACT,シアル酸)と遠隔成績を比較検討した.その結果,MAO=0mEq/h症例の5年生存率は29.2%と遠隔成績が最も不良で,次いで0mEq/h<MAO≦7.0mEq/h症例,73.6%,7.0mEq/h<MAO症例は88.4%と最も良好であった.統計学的には,MAO=0mEq/h症例,0mEq/h<MAO≦7.0mEq/h症例,7.0mEq/h<MAO症例それぞれの間で有意の差がみられた.MAO=0mEq/h症例は0mEq/h<MAO≦7.0mEq/h症例,7.0mEq/h<MAO症例に比べて細胞性免疫能が低く,CEA,TPA,IAPなどの免疫抑制物質も高値を示した.
以上より,低酸ではあるが,酸分泌能がある程度保たれている患者群では,細胞性免疫能が保たれていたこと,あるいは保たれる可能性が考えられたこと,更に,遠隔成績が良好であることが示された.

キーワード
胃癌, 胃酸分泌能, 予後因子, 細胞性免疫能, 血中糖蛋白


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