[書誌情報] [全文PDF] (644KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 83(2): 231-238, 1982


原著

死体腎の機能的生着に影響を及ぼす諸因子の検討

岡山大学 第1外科

阪上 賢一 , 渕本 定儀 , 堀見 忠司 , 折田 洋二郎 , 藤原 徹 , 難波 晃 , 湊 宏司 , 田中 信一郎 , 関 裕次 , 折田 薫三

(昭和56年9月21日受付)

I.内容要旨
1977年2月より1981年4月までに経験した死体腎移植は26例であり,全例コリンズ変法液用いる単純冷却保存法により行った.今回は,3年以上経過した16症例を対象として,移植腎の機能的生着に影響を及ぼす諸因子について検討した.
1)WITが30分以内であればほぼ全例に移植機能の発現をみた.しかし,その発現時期ほ一定ではなく37.5%は2週間以内に,62.5%は2週間以上を要した.
2)TITが6時間を越える症例の70%は,移植腎機能発現に2週間以上を要した.
3)ドナーの死亡前の状態の内,血圧80mmHg以下3時間以内,50mmHg以下1時間以内,無尿期間6時間以内および血清クレアチニン値2mg/dl以下を示す症例では移植後2週間以内に腎機能の回復性が示唆された.
4)移植腎機能2週間以内発現群の3年生着率は67%であるのに比し,2週以降群では25%とANTの長期化が移植腎の長期的生着に悪影響を及ぼしていた.
5)HLA-A,B抗原0~2個不適合群と3~4個不適合群の1および3年生着率をみると,前者では67%,67%後者では29%,0%であった.また,HLA-DR抗原不適合症例は全例3~4カ月以内に拒絶されたが,HLA-DR抗原に全く不適合のなかつた3症例中2例は良好な移植腎機能を有して6カ月目の現在生着中である.
6)前感作抗体陰性群の2年生着率は75%と良好であるが,陽性群では17%と不良であり,high responderの移植成績の悪いことが示された.

キーワード
死体腎移植, ATN, HLA, 前感作抗体, 移植前輸血


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。