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日外会誌. 83(2): 220-230, 1982


原著

肝圧縮法による実験的門脈圧亢進症犬の肝病態変化と本法の長期効果に関する検討

久留米大学 第1外科

山名 秀明 , 梅谷 敬哲 , 武田 仁良 , 掛川 暉夫

(昭和56年11月12日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症の原因疾患として大半を占める肝硬変症に対しての根本的治療は現在のところないに等しい.そこで,本症に伴う最も重篤な食道静脈瘤出血を如何に防止するかと言うことが,外科治療の目標とされている.しかしながら,食道静脈瘤のみに主眼を置いていては本症の本質的治療には近づけないものと考えられ,今後の治療目標をより本質的なものとするためには門脈圧亢進症の成因,病態をより明確にする必要がある.このような観点から,臨床病態類似の実験モデル作成に取り組み肝圧縮法を考案した.今回は,本法により作成した実験モデルにおいて圧縮後の肝がどのように変化していくか,また本法の長期効果はどうであるかと言うことを中心として検討してみた.
雑種成犬15頭を用いて,5頭はControl,肝圧縮により門脈圧を280mmH2O前後にまで上昇させた5頭をGroup I,門脈圧を350mmH2O前後にまで上昇させた5頭をGroup IIとして術後6カ月までの経過を肝機能格査と肝組織検査により観察した.また,術後6カ月目の食道粘膜下静脈の状態を光顕像にて観察した.
Group IIはGroup Iに比べて肝に加わる侵襲は大きく,かつ遷延する傾向が認められた.また組織所見でも肝の線維化増大と食道粘膜下静脈の拡張が認められた.一方,Group Iでは術後2カ月までは肝圧縮効果は保たれていたが,6カ月目には肝は圧縮材料のメッシュよりはずれて著明に肥大しており,門脈圧も肝圧縮前値近くにまで下降し,食道粘膜下静脈の拡張も認められなかった.
これらの所見より,肝圧縮法による長期効果は門脈圧が300mmH2O以上になるようにすれば認められるが,肝圧縮不充分となる300mmH2O以下では期待できなかった.また,本法による実験モデルは臨床類似の肝障害を有しており,門脈圧亢進症の研究に有用なものと考えられた.

キーワード
実験的門脈圧亢進症, 肝圧縮法


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