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日外会誌. 124(6): 492-499, 2023


特集

先天性嚢胞性肺疾患のup to date

5.外科治療1.新生児・乳幼児における肺区域切除術の適応と現況

大阪母子医療センター 小児外科

臼井 規朗

内容要旨
発症機序に基づいた新しい疾患概念で先天性嚢胞性肺疾患を分類し,疾患に応じて適応を定めれば,肺区域切除術は新生児や乳幼児に対しても有用と考えられる.本稿では,肺区域切除術が適応となる疾患や病態について考察し,適応疾患の概説に加えて肺区域切除の現況について記述する.
肺区域切除術が適応となる嚢胞性肺疾患は,病変の範囲と境界が明確で,正常気管支との間に交通を持たない気管支閉鎖症や比較的病変の小さな肺葉内肺分画症と考えられる.また,異なる肺葉に病変が複数存在する場合は,肺全摘を回避して肺実質を可及的に残すことを目的に肺区域切除術が選択される.年齢的には残存肺の代償性発育が望めない年長児にとって肺区域切除術は良い適応であるが,新生児でも過膨脹した病変を有する症例や,乳幼児における無症候性の先天性嚢胞性肺疾患では,区域切除術や部分切除術が適応となる.
気管支閉鎖症は胎児期に形成された気管支がなんらかの原因で区域・亜区域レベルで閉鎖して生じる形成異常であるが,従来CPAM2型と診断されてきた症例の多くは気管支閉鎖が原因であることが明らかになってきた.また,過剰な肺芽から発生した分画肺が正常肺と同一の胸膜内に存在する肺葉内肺分画症は,病変が小さければ区域切除でも切除できる.
現在,小児の先天性嚢胞性肺疾患の10〜25%に対しては,区域切除または部分切除が行われており,術後の気胸発症や病変の遺残・再発が課題であるものの,手術手技の安全性や実施可能性は確立されている.

キーワード
先天性嚢胞性肺疾患, 区域切除術, 肺葉切除術, 気管支閉鎖症, 肺分画症


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