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日外会誌. 92(4): 381-386, 1991


原著

メナテトレノンの腹膜癒着に及ぼす影響
―Ryan's Modelを用いて―

山口大学 医学部第1外科学教室

沖野 基規 , 富恵 博 , 兼定 博彦 , 丸本 多 , 守田 信義 , 江里 健輔

(1990年2月15日受付)

I.内容要旨
著者らは開腹術後の癒着性腸閉塞の発生頻度が,メナテトレノン(Vitamin K2)投与によって上昇する現象をretrospective studyで明らかにしたが,この現象を実験的に再現し,確認する目的で本研究を行った.総数170匹のドンリュウラット(雄,200~250g)を対象とし,Ryan’s Modelを作成し,ceco-colonic adhesionを用いて検討した.
メナテトレノン投与群(i.m., 10mg/kg×3,24hr毎)では,ceco-clonic adhesionの発生頻度は54%(20/37)と,非投与群の26%(10/39)に比較して上昇していた(p<0.012).特にair-drying time 1~ 2分の中等度漿膜障害を加えた場合では,非投与群21%(6/29)に比べ,メナテトレノン投与群は61%(17/28)と,ceco-clonic adhesionの発生頻度は約3倍に上昇していた(p<0.01).また,薬剤投与量が,0mg,3.3mg,10mg(i.m.,/body)と増加するにつれて,ceco-colonic adhesionの発生頻度は11%(2/18),15%(3/20),55%(11/20)と上昇し,投与量依存性が認められた(p<0.01).臨床例で統計学的に指摘された現象が,ラットにおけるRyan’s Modelにおいて再現できたことにより,メナテトレノン投与によって腹膜癒着が充進することが,より確実な事実として認識できた.開腹術後にメナテトレノンを投与する場合,癒着性腸閉塞の発生頻度を上昇させる可能性があり,大量投与とならないように注意すべきである.

キーワード
menatetrenone, vitamin K, adhesion, peritoneal adhesion


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