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日外会誌. 92(4): 387-396, 1991


原著

食道扁平上皮癌患者におけるSCC抗原の腫瘍マーカーと
しての有用性に関する臨床的・基礎的研究

岩手医科大学 第1外科(指導:斎藤和好教授)

池田 健一郎

(1990年3月5日受付)

I.内容要旨
目的:SCC抗原の食道扁平上皮癌における腫瘍マーカーとしての有用性を知る目的で以下の研究を行った.
対象と方法:(1)臨床例の検討:食道癌患者75名,食道良性疾患患者7名,胃癌患者11名,健常者15名を対象として血中SCC抗原濃度を測定した.さらに食道癌患者では,同時に他の腫瘍マーカーであるIAP,CEAを経時的に測定し進行度との相関や治療前後の推移を検討した.また,血中SCC抗原濃度と病理学的因子や予後との関連も検討した.
(2)免疫組織化学染色による検討:抗SCCモノクローナル抗体を用いて,正常食道粘膜と31例の食道癌組織に対しABC法による染色を施行し,SCC抗原の発現態度や染色陽性率と血中濃度,進行度,病理学的因子とを比較検討した.
(3)SCC抗原産生能を有するヌードマウス可移植癌株(IMEs-1)による検討:IMEs-1を用いて腫瘍増殖と血中SCC抗原濃度の関連について比較検討した.
結果:(1)臨床例の検討:各マーカーの陽性率は,SCC抗原42.7%,IAP 64.6%,CEA 16.9%であった.3マーカー中SCC抗原とIAPが進行度を反映し,SCC抗原が最も鋭敏に治療効果を反映していた.また,stage IV症例の1生率は,術前血中SCC抗原陽性群34%,陰性群59%であり,陽性群における生存率の低下を認めた.
(2)免疫組織化学染色による検討:SCC抗原は,正常食道粘膜,癌組織ともに胞体内に染色され,染色陽性率と血中濃度,進行度,各種病理学的因子との関連は認められなかった.
(3)IMEs-1による検討:SCC抗原は,腫瘍体積と並行して増加し,腫瘍体積を反映していた.
結語:SCC抗原は,腫瘍体積や病状を反映し,治療効果のモニタリングや予後因子として有用なマーカーと思われた.

キーワード
SCC 抗原, TA-4, 食道癌, 腫瘍マーカー, 免疫組織化学染色


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