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日外会誌. 91(11): 1736-1739, 1990


原著

開心術における GVHD と使用保存血のリンパ球 blastogenesis との関係

名古屋大学 医学部胸部外科
*) 愛知県立尾張病院 

田嶋 一喜 , 川村 光生*) , 日比 道昭*) , 岡本 光弘*) , 伊藤 修*) , 村上 喜正*) , 阿部 稔雄

(1989年12月16日受付)

I.内容要旨
開心術後の輸血によると思われる急性GVHD(graft versus host disease)の予防として,使用する新鮮血や濃厚血小板製剤に対してはあらかじめ放射線照射を行うようになってきている.しかし現在保存血には一般的に放射線照射が行われていない.今回われわれは保存血液のT cell blastogenesisの残存程度から保存血によるGVHD発症の可能性を検討した.
健康な成人男子8名より採取した血液を3日間5日間及び7日間保存し,そのリンパ球blastogenesisをPHA(phytomagglutinin)testとMLR(mixed lymphocyte reaction)testをおこない,生血と比較した.PHA testのstimulation index(S. I.)は生血から3日,5日,7日保存するにつれ,生血100%に対し,86.7±24.8%,44.2±12.5%,31.2±11.1%,と減少し,MLRでも同様に92.5±21.8%,45.9±9.8%,33.3±10.1%と減少した.何れも初めの3日間の減少程度は緩やかで,反応性はかなり高く保たれており,保存血(採血後72時間以降)でもGVHD発症の可能性を示した.
保存血といえども採血後1週間程度の比較的新しい血液は放射線照射が必要であると思われる.

キーワード
GVH 反応, リンパ球幼若化反応, 輸血, 開心術


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