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日外会誌. 91(11): 1740-1748, 1990


原著

気管保存に関する実験的研究

岡山大学 医学部第2外科教室(主任:寺本 滋教授)

伊達 学

(1989年11月4日受付)

I.内容要旨
同種気管移植において保存気管が使用可能か否か,また気管保存における保存液の適性を知る目的でこの実験を行った.雑種成犬を用い頸部気管5軟骨輪を摘出後,これを3種の保存液に24時間および48時間低温単純浸漬保存した後,自己の大網で保存気管を被覆しこれを腹腔内に移し,術後21日目に摘出して観察した.成犬35頭を用い,非保存(コントロール)群4頭,Collins液群11頭(24時間保存4頭,48時間保存7頭),リン酸緩衝細胞外液組成保存液(Ep4液)群11頭(24時間保存4頭,48時間保存7頭),生理食塩水群9頭(24時間保存4頭,48時間保存5頭)を作製した.肉眼的観察ではCollins液群1頭,Ep4液群2頭に気管融解を認めたが,その他はほぼ正常の所見を呈していた.組織学的検討では,非保存群は全例viablaな軟骨細胞を認め,線毛多列円柱上皮の形態をとり,粘液染色陽性の物質を有する気管腺の再生を認めた.各保存群では全例軟骨細胞は保持されていたが,上皮,気管腺および線毛ではさまざまな再生過程が見られた.そこで各保存群において気管上皮,気管腺,線毛の再生についてその変化を形態学的にgrade分類し,スコア化して比較検討するとともに,各項目のスコアの合計点をtotal scoreとして各群問で統計学的に比較検討した.Collins液群は各スコアにおいてEp4液群に比して有意に高値を示した.また,total scoreにおいてもCollins液群は他の2群に比して有意に高値を示し秀れた保存液と考えられた.今回の実験において,各種溶液を用いた48時間までの気管保存の可能性が示唆された.また,保存液の差異による検討ではCollins液が有用であると考えられた.

キーワード
気道再建, 同種気管移植, 気管保存, 大網被覆


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