[書誌情報] [全文PDF] (4196KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 91(11): 1691-1699, 1990


原著

S状結腸, 直腸の癌腫および腺腫における Lewis 式血液型抗原の免疫組織学的検討

大阪市立大学 医学部第1外科(指導:梅山馨教授)

本吉 宏行

(1989年11月24日受付)

I.内容要旨
S状結腸癌,直腸癌75例,ならびにS状結腸,直腸腺腫58例を対象にLewis式血液型抗原に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織学的に検討し以下の成績をえた.
1.Lewisb抗原の染色陽性率は,成人の正常粘膜では,上行結腸100%,横行結腸100%,S状結腸25%,直腸30%であり,S状結腸,直腸においてはLewisb抗原の発現頻度は低かった.
2.Lewisb抗原のS状結腸,直腸における陽性率は,癌97%,腺腫57%,正常粘膜26%であり,癌あるいは腺腫の陽性率は正常粘膜に比べて有意に高かった(p<0.01).
3.Lewisb抗原のS状結腸,直腸における局在様式は,癌では細胞自由縁,細胞質ともに,腺腫では主として細胞質にみられ,正常粘膜では細胞自由縁,細胞質ともにほとんどみられなかった.
4.Lewisb抗原のS状結腸および直腸における腺腫の陽性率を組織異型度別にみると,軽および中等度異型腺腫での陽性率は42%,高度異型腺腫での陽性率は68%であり,後者は前者に比べて有意に高かった(p<0.05).また大きさ別では,大きさが2cm以上の腺腫は,2cm未満の腺腫より陽性率の高い傾向がみられた.
以上の結果から,Lewisb抗原がS状結腸,直腸における癌の発生ならびに腺腫のmalignant potentialと何らかの関係を有する可能性が示唆された.

キーワード
S 状結腸癌, 直腸癌, S 状結腸腺腫, Lewis 式血液型抗原, 直腸腺腫


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。