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日外会誌. 91(11): 1685-1690, 1990


原著

重症肥満に対する胃バイパス術と垂直遮断胃形成術の比較検討

千葉大学 医学部第2外科

山崎 一馬 , 川村 功 , 宮沢 幸正 , 磯野 可一

(1989年11月24日受付)

I.内容要旨
重症肥満に対する胃バイパス術と垂直遮断胃形成術の効果を臨床的に比較検討した.対象は当施設にて手術治療を施行した重症肥満のうち胃バイパス術10例(GB群)と垂直遮断胃形成術34例(VBG群)で,検索項目は肥満度,体重減少量,肥満併存症および術後合併症である.GB群では術前肥満度199±20%が,術後6カ月136±15%,1年130±13%,3年131±14%,5年136±19%と低下した,VBG群では術前肥満度212±26%が,術後6カ月149±17%,1年143±19%,3年144±18%となり早期ではGB群が有意(p<0.05)に低値であった.体重減少量は両群共に約35kgと差はなかった.併存症は術前には代謝臓器障害,心循環系障害を主体に高率に認められたが,肥満度の低下により術後1年以降では大部分が治癒し両群間に差を認めなかった.入院中に手術治療に伴う重篤な合併症はなく全例社会復帰を果した.術後合併症は,GB群では20%にVBG群では9%にみられた.再手術はGB群で遮断部離開の1例(10%),VBG群で腸閉塞の1例(3%)であった.
以上の結果より,重症肥満に対する胃バイパス術および垂直遮断胃形成術はともに安全で有効な治療法である事がわかった.術後比較的早期では肥満度の低下は胃バイパス術でより良好であったが,3年以降では差はなかった.肥満併存症の治癒率,術後合併症にも両群間に有意差は認められなかった.

キーワード
重症肥満, 胃縮小手術, 胃バイパス術, 垂直遮断胃形成術


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