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書誌情報]
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日外会誌. 91(11): 1700-1709, 1990
原著
DNA flow cytometry からみた大腸癌の予後に関する検討
I.内容要旨大腸癌の生物学的悪性度の評価におけるFlow cytometryによる細胞核DNA量測定の意義を明らかにする目的で,核DNA量と臨床病理学的因子及び予後との関連を検討した.
1971~1985年の15年間に当科で手術を施行し,パラフィン包埋標本からFlow cytometryによる核DNA量の評価が可能であった初発大腸癌144例を対象とした.核DNA量は,Schutteらの方法に準じてパラフィン包埋標本から得られた単離裸核細胞に,propidium iodideによる核染色を施し,EPICS-751 Flow cytometerにて測定した.ヒストグラムの解析はDNA Index(DI)=1をdiploid,DI≠1をaneuploidとした.
大腸癌144例中diploidは63例(43.7%),aneuploidは81例(56.3%)であった.また,aneuploidにおけるDIは二峰性分布を示した.臨床病理学的因子である年齢,性,腫瘍径,占居部位,肉眼型,組織型,腹膜転移,肝転移,リンパ節転移,壁深達度及びDukes分類,組織学的進行度とDNA ploidy patternとの間には,いずれも有意な相関を認めなかった.一方,DIは低分化腺癌で有意に高く,細胞分化度と相関する傾向を認め,また,組織学的stage III及びstage Vにおいて有意な高値を示した.予後との関係をみると,全対象例におけるaneuploid群の累積生存率は,diploid群に比べて有意に低かった(p<0.001).さらに手術治癒度,病期進行度及び組織型を揃え,あるいはstageを構成する因子の陰性例(n(-)例,P
0例,H
0例)に限定した検討においても,それぞれaneuploid群の予後が悪かった.一方,aneuploidを1.0<DI≦1.4,1.4<DI≦1.8,1.8<DIの3群に分け,aneuploidにおけるDIと予後との関係を検討したが,有意な関係は認められなかった.
以上の成績から,大腸癌の細胞核DNA量は生物学的悪性度を反映し,特にploidy patternからみた核DNA量が,従来の臨床病理学的因子とは独立した新たな予後規定因子の一つになり得ることがわかった.
キーワード
Flow cytometry, DNA ploidy pattern, DNA Index, 大腸癌の悪性度
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