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日外会誌. 91(5): 575-580, 1990


原著

大腸癌における還流血中 CEA 値ならびに還流血末梢血 CEA 較差と予後との関連

1) 三菱神戸病院 外科
2) 神戸大学 医療技術短期大学部
3) 神戸大学 医学部第1外科

出口 浩之1) , 多淵 芳樹2) , 斎藤 洋一3)

(1989年5月16日受付)

I.内容要旨
術中に腫瘍還流静脈血を採取し,CEAを定量した大腸癌切除94例を対象として,還流血中CEA値(dCEA)ならびに還流血と末梢血とのCEA較差(d-pCEA較差)と転帰との関連を検討した.
dCEAの実測値(Mean±S.E., ng/ml)と5.0ng/ml以上の陽性率(%)は生存59例では21.1±5.2・55.9%であり,死亡35例では151.3±88.3・77.1%であった.死亡例は生存例に比較してdCEAの実測値は高い傾向(p<0.1)があり,また陽性率は有意に(p<0.05)高値を示した.d-pCEA較差の実測値と5.0・10.0ng/ml以上の症例の出現頻度は,生存例ではそれぞれ11.2±3.6,37.2%・15.3%,死亡例ではそれぞれ119.4±75.9,57.1%・42.9%であり,死亡例は生存例に比較してd-pCEA較差の実測値と5.0ng/ml以上を示す頻度は高い傾向(p<0.1)にあり,10.0ng/ml以上を示す頻度は有意に(p<0.01)高率であった.dCEA陽性例(N=60)の生存率は陰性例(N=34)よりも,またd-pCEA較差5.0ng/ml以上の症例(N=42)の生存率はそれ未満の症例(N=52)よりも有意に(p<0.01)不良であった.特にd-pCEA較差10.0ng/ml以上の症例(N=24)の生存率はそれ未満の症例(N=70)よりも有意に(p<0.001)不良で,4年生存率は前者37.5%,後者63.3%であった.
これらの結果は,dCEA定量が予後の推定に有用であることを示唆すると同時に,dCEAおよびd-pCEA較差が5.0ng/ml以上,特に10.0ng/ml以上を示す症例は予後不良例として臨床的に対処する必要があることを示唆していると考えられる.

キーワード
大腸癌, 大腸癌の術後生存率, carcinoembryonic antigen(CEA), 還流静脈血, 還流血末梢血 CEA 較差


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