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書誌情報]
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日外会誌. 88(12): 1718-1730, 1987
原著
イヌにおける同所性同種肝移植の研究
I.内容要旨イヌにおける同所性同種肝移植で長期生存をめざし,mizoribineあるいはciclosporinによる免疫抑制を行つたところ,次のような成績を得た.
1)無処置対照群(n=5)の生存日数は10.0±2.9(mean±SE)日で, mizoribine群(n=15)は44.6±31.8日,ciclosporin-mizoribine群(n=12)は145.4±70.8日であり,最後の群のうち2頭は438日および810日と生存中である.mizoribine群は対照群との間で生存期間の有意の延長は認められなかつたが,ciclosporin-mizoribine群は,100日以上の生存をすべて100日とすると,対照群より有意に生存期間が延長した(p<0.02).また,移植後20日の時点で生存率を比較すると,ciclosporin-mizoribine群は,mizoribine群より生存率が有意に良好であつた(p<0.05,χ
2検定).
2)移植肝の阻血に伴う検査所見として,SGPT,血清alkaline phosphatase,bilirubin値の一過性の上昇が認められた.
3)急性拒絶反応では,S-GPT,血清alkaline phosphatase,bilirubin値の上昇が認められたが,中には不明確な場合があり,確診には組織生検が必要であつた.
4)慢性拒絶反応においては,イヌではきわめてめずらしいとされるvanishing bile duct syndromeを経験した.
5)肝動脈血栓では一般にS-GPTおよびalkaline phosphatase高値が認められたが,確診には肝動脈造影が必要であつた.また,肝動脈血栓に伴い,胆道穿孔を示した例があつた.
6)胆道系合併症では血清bilirubin値の上昇があり,確診のため,胆道造影検査が必須であると思われた.
7)肝移植後長期生存を得るためには,多くの術後合併症に対し,早急に的確な診断を行い,治療を行う必要のあることを強調した.
キーワード
イヌ同所性同種肝移植, ciclosporin, mizoribine, 術後合併症, vanishing bile duct syndrome
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