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日外会誌. 88(8): 962-969, 1987


原著

マウス初代培養肝細胞の免疫学的検討

日本医科大学 第1外科学教室 (主任:恩田昌彦教授)

加藤 俊二

(昭和61年10月11日受付)

I.内容要旨
肝を部分切除したマウスでは,肝再生の過程で免疫系の活性化することが明らかにされている.著者はこの活性化した免疫系の肝再生におよぼす影響を検索する目的で,マウス肝細胞の初代培養を試み培養肝細胞の性質を明かにするとともに,肝細胞と免疫系組織の細胞とを混合培養し,免疫系細胞の培養肝細胞におよぼす影響を観察した.肝細胞の初代培養には培養液の交換が必須であり,再生肝細胞は正常肝細胞に比し,より高い増殖能を示すことが明らかになつた.再生肝の4日間培養には,正常肝と異なりinsulin,epidermal growth factorをほとんど必要としなかつたが,10日間以上の培養には肝細胞の培養維持にこれらのホルモンを必要とした.またdexamethazoneは再生肝細胞の培養プレートへの生着能を促進した.さらに免疫系細胞を肝細胞と混合培養すると,培養肝細胞の3Hthymidineの取込は抑制されるが,その抑制活性には免疫系細胞の種類による差や,遺伝学的拘束性は認められなかつた.しかしその抑制が再生肝でより著明であることは,肝再生過程に免疫系が関与する可能性を示唆している.

キーワード
マウス初代培養肝細胞, 再生肝細胞, ホルモン因子, 混合培養, 免疫系細胞との相互作用


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