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日外会誌. 88(8): 970-981, 1987


原著

胆嚢癌の Rokitansky-Aschoff 洞内進展と間質浸潤との組織学的鑑別について
ー早期胆嚢癌の定義に関連してー

新潟大学 医学部第1外科 (主任:武藤輝一教授)
新潟大学 医学部第1病理 (主任:渡辺英伸教授)

白井 良夫

(昭和61年10月13日受付)

I.内容要旨
胆嚢癌においては,Rokitansky-Aschoff洞(以下RAS)内への上皮内進展(以下RAS内進展)が見られるため,組織学的深達度の判定はしばしば問題となる.本研究の目的は,まず第1に,RAS内進展癌と間質浸潤癌とを組織学的に鑑別することにある.第2に,RAS内進展により漿膜下層に達した癌を早期癌の範畴に入れてよいかどうかを明らかにすることにある. 
非癌胆嚢31例に見られた153個のRASにつき検討し,RASは粘膜固有層と同質の結合組織(以下“ RAS周囲間質”“peri-RAS stroma”)に取り囲まれていることを見出した.癌腺管周囲に“RAS周囲間質”が見られるか,癌腺管内に癌と非癌の境界(front)が見られる場合,癌のRAS内進展の組織像であると判定した.それに対し,浸潤性癌腺管周囲の増殖性間質は“RAS周囲間質”と組織学的に異なるため,癌のRAS内進展と間質浸潤とは鑑別可能であつた. 
癌がRAS内進展により漿膜下層へ達している13症例には,脈管侵襲,神経浸潤,リンパ節転移は見られず,再発例も無かつた.従つて,これらは深達度が固有筋層までの癌とともに早期癌の範鴫に入ると考えられた.

キーワード
胆嚢癌, Rokitansky-Aschoff 洞 (RAS), RAS 内進展, RAS周囲間質, 早期胆嚢癌


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