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日外会誌. 88(2): 143-151, 1987


原著

虚血後再灌流時における Catecholamine と Ca 拮抗剤投与の効果について

東京医科歯科大学 胸部外科

大島 永久

(昭和61年3月17日受付)

I.内容要旨
虚血後の血液再灌流は,虚血心筋において心機能,心筋代謝,心筋形態などの障害,すなわちreperfusion injuryを惹起する.著者は,40分間の左前下行枝の結紮とそれに引き続く15分間の再灌流を行ない,再灌流時の血行動態改善を目的として再灌流時にcatecholamine(dobutamine 5μg/kg/min)を投与し,またcatecholamineや虚血後再灌流時にみられるCa overloadingの弊害を防止するためCa拮抗剤(diltiazem 0.1mg/kg bolus IV,30μg/kg/min)を併用投与し,血行動態,心筋代謝及び超微構造に及ぼす効果について検討した.
結果:再灌流時のdobutamine投与群(DOB群)では動脈圧の上昇,心拍出量の増加などの心機能改善が得られたが,心拍数増加をきたした.これに対し,doubutamineとdiltiazem併用群(DOB+D群)では動脈圧はDOB群よりやや低いものの有意に上昇し,心拍数の増加を伴うことなく,心拍出量,左室心仕事係数は著明に増加した.冠血流量は左前下行枝では有意差なく,左回旋枝ではDOB群,DOB+D群ともに増加したが,DOB+D群では他の2群に比し有意に増加した.心筋酸素消費量は3群間に有意差は認められず,その結果,心筋効率はDOB+D群が高値であつた.
心筋内ATP量は虚血心内膜側でcontrol群(C群)1.98±0.61μmol/gm,DOB群4.16±0.23μmol/gm,DOB+D群4.29±0.49μmol/gmとDOB群,DOB+D群で良好に保持された.虚血心内膜側心筋Ca量,水分含量はDOB+D群がやや低値であつたが,有意差は認められなかつた.
ミトコンドリアスコアからみた超微構造については,DOB+D群で良好に保存された.
以上より再灌流時の少量のdobutamine投与は,心筋障害を増悪することなく血行動態を改善させ,さらにdiltiazemを併用することで,血行動態の向上,reperfusion injury軽減効果が得られた.

キーワード
Dobutamine, Diltiazem, Reperfusion injury, Myocardial protection


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