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日外会誌. 87(4): 395-402, 1986


原著

急性胃粘膜病変における胃粘膜内 Glycosidase 活性の消長とその意義

横浜市立大学 医学部第2外科学教室(指導:土屋周二)

渡辺 桂一

(昭和60年7月10日受付)

I.内容要旨
急性胃粘膜病変の病態及び成因を解明するために,組織内糖蛋白代謝の面から,実験的に検討した.
Wistar系雄性ラット131匹を使用し,体表面積30%の熱傷を負荷し急性胃粘膜病変を作成した.熱傷後1時間から6時間まで,腺胃組織内の4種類の水解酵素の活性値の変化を測定した.
β-N-Acetyl-D-glucosaminidaseは対照群で59.50±3.27μg 4MU/h/mg proteinであり,熱傷後1時間で,71.13±3.27units(p<0.05),2時間で80.50±2.92units(p<0.01),3時間で78.0±1.93units (p<0.01)と有意の上昇を示し,以後は低下した.β-N-Acetyl-D-galacosaminidaseは対照群で17.5±1.60μg 4MU/h/mg proteinであり,2時間後21.25±1.10units(p<0.05)と有意の上昇を示した.
さらにβ-D-Glucuronidase活性は対照群で8.68±0.89μg phenol/h/mg proteinであり,熱傷後1時間で14.58±1.96units(p<0.01),2時間で19.94±2.40units(p<0.01),3時間で1722±1.65units (p<0.01)と有意の上昇を示した.同様にα-L-Iduronidase活性値は対照群で4.52±0.37units,1時間で7.72±1.27units(p<0.05),2時間で10.05±1.82units(p<0.05),3時間で9.64±1.15units (p<0.01)と1時間から3時間まで有意の上昇を示した.組織内の糖蛋白に攻撃的に作用する4種類の水解酵素活性値はいずれも上昇を示していた.
以上の結果からみると,熱傷ストレス負荷後,微小循環障害を生じ,それに伴う細胞内pHの低下,Energy代謝の低下により,lysosome膜の脆弱化,水解酵素の活性化がおこり,これら一連の反応が,急性胃粘膜病変形成につながるものと推測された.

キーワード
β-N-Acetyl-D-glucosaminidase, β-N-Acetyl-D-galactosaminidase, α-L-lduronidase, β-D-Glucuronidase, 急性胃粘膜病変


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