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日外会誌. 87(4): 403-407, 1986


原著

潰瘍性大腸炎における Kock’s continent ileostomy

山形大学 医学部第1外科(主任:塚本 長教授)
*) 東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

亀山 仁一 , 星川 匡 , 塚本 長 , 佐々木 巌*) , 成井 英夫*) , 舟山 裕士*) , 佐藤 寿雄*)

(昭和60年7月8日受付)

I.内容要旨
潰瘍性大腸炎に対する外科的治療として種々の術式が選択されているが,本症の根治性の点からは大腸全摘術が望ましい.この場合,end ileostomyによる回腸瘻造設後では,排便機能,回腸瘻周囲の皮膚のびらん・潰瘍,さらには患者の精神的な負担などの面で問題が多い.そこで今回,潰瘍性大腸炎に対して,大腸全摘後Kock法によるcontinent ileostomyを作製した4例を対象として,術後合併 症などの外科的問題点および排便状況,内圧,容量,腸内細菌叢,血漿アミノ酸などの病態生理について検討した.なお,病態生理については潰瘍性大腸炎で大腸全摘後にend ileostomyを作製した5 例および健康人20例を対照として比較検討した.その結果,continent ileostomyの術後合併症は4例 全例にみられたが,3例は保存的あるいは外科的療法で治癒した.残る1例は,やむなく貯留嚢を摘 出した.病態生理について,排便状況の面からみると,continent ileostomyでは排便回数は1日1~4 回で,回腸瘻周囲の皮膚のびらん・潰瘍は1例もみられなかつた.内圧についてみると,nipple valve に一致して昇圧帯を認めた.また,貯留嚢の最大容量に対して約80%の充満で腹部膨満感が生じ,便意に関して自己調節が可能であつた.これらの成績は,いずれもend ileostomyに比べ良好なものであつた.また腸内細菌叢,血漿アミノ酸もcontinent ileostomyではend ileostomyに比べ健康人に近い成績を示した.
以上より,continent ileostomyは手技上やや繁雑で術後合併症も少なくないが,排便状況を含めた術後の病態をみると良好な成績が得られているので,潰瘍性大腸炎に対して積極的に推奨すべき手術々式の1つであると思われた.

キーワード
Kock’s continent ileostomy, 潰瘍性大腸炎, 回腸瘻内圧, 血漿アミノ酸, 腸内細菌叢


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