[書誌情報] [全文PDF] (4408KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 87(4): 387-394, 1986


原著

胃癌組織内プロラクチンの免疫組織化学的検討
-染色性とその臨床的意義について-

埼玉医科大学 第2外科学教室(主任:石田 清教授)

森田 孝夫

(昭和60年8月8日受付)

I.内容要旨
胃癌におけるホルモンレセプターの存在やスキルス胃癌におけるホルモン依存性が明らかにされ,胃癌の増殖,進展に及ぼすホルモンの生理作用が注目されつつあるが,プロラクチンの胃癌増殖における役割についてはいまだあまり明らかにされていない.筆者は胃癌154例,胃潰瘍10例についてPAP immunoperoxidase染色法を用い,胃癌組織内プロラクチンの分布を免疫組織化学的に追究し,染色性とその臨床的意義を検討した.その結果,プロラクチンは非癌性胃粘膜では胃粘膜のneck cell,腸 上皮化生を示す腺管の下部1/3,潰瘍底の再生上皮など細胞再生の盛んな部位に認められた.胃癌においては154症例中84症例(54.5%)にプロラクチンが陽性であり,その染色部位は高分化胃癌では腺腔側傍核性に極在して,低分化癌では細胞質内にびまん性に散布して認められた.プロラクチンと臨床像との相関は素データ上は不顕性であつたが,por以外の組織型では患者数がstage 1~4にほぼ均等に分布しているのに対し,por症例ではその約80%がstage 3・4に偏在することから,por症例を除外して再検討したところ,プロラクチンと臨床像との相関は顕性化した.すなわち,stage別ではstage 1(13/26)),stage 2(6/12),stage 3(12/21),stage 4(15/22)であり,深達度別ではm・sm(10/29),pm・ss(α,β)(9/16),ss(γ)(8/13),se(20/31),si・sei(3/4)であり,また,リンパ節転移別ではn0(20/40),n1(6/13),n2(13/21),n3・n4(4/4)であり,stage,深達度,リンパ節転移など各項目の増加に伴い,プロラクチン陽性率がそれぞれ増加する傾向が認められた.また,脈管侵襲を伴なう症例にプロラクチン陽性率が高かつた(p<0.05).以上の結果は,プロラクチンが胃粘膜および胃癌に対して増殖因子として作用していることを示唆する.

キーワード
胃癌, プロラクチン, PAP Immunoperoxidase法, Growth Factor


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。