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日外会誌. 87(1): 67-78, 1986


原著

膵切除後の糖代謝,膵内分泌機能に関する実験的研究
-islet activating protein(IAP)の影響-

神戸大学 医学部外科学第1講座

足立 確郎 , 大柳 治正 , 中谷 正史 , 斉藤 洋一

(昭和59年12月24日受付)

I.内容要旨
ラット膵広範切除後の残存膵内分泌機能,糖代謝に対するIAPの影響について,糖負荷試験(OGTT),アルギニン負荷試験(ATT),肝グリコーゲン,肝解糖系酵素活性,組織学的検査等により検討した.
実験材料および方法:体重300g前後のWistar系雄ラットをIAP処理群と無処理群に分け,IAP処理群には無麻酔下にIAP 10μg/kgを尾静脈より投与した.また各々の群に対しScowの方法に従つて,60%および90%膵切除を行い,単開腹群を対照とした.膵切除前,切除後3日目,1週目,2週目,4週目,8週目にはOGTT,ATTを施行した.また膵切除後2週目の肝臓を採取し,肝グリコーゲン量,肝解糖系酵素活性を測定した.
組織学的検査では,膵切除後8週目の残存膵を採取し,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色,アルデハイド・フクシン(AF)染色,およびパーオキシダーゼ・抗パーオキシダーゼ(PAP)法による組織内抗原(インスリン,グルカゴン)の染色を行つた.
結果:①60%膵切除では軽度の耐糖能異常を示した.②90%膵切除における耐糖能異常は,日時を経るに従つて悪化した.③膵広範切除にてもグルカゴン分泌能は著明な障害を受けなかつた.④IAPは,単開腹群,60%切除群においてIRI分泌応答を亢進させ,耐糖能を改善した.⑤IAPは,90%切除群に対しては効果を示さなかつた.⑥IAPは膵切除後のIRG分泌応答を亢進させなかつた.⑦肝解糖系酵素活性は,IAP処理群において高値を示した.
以上より,IAPは膵切除後の糖代謝異常に対して,その切除範囲が,極端に多くない限り,適応の可能性が示唆された.

キーワード
膵切除後の糖代謝, islet activating protein (IAP), 膵切除後の内分泌機能


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