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書誌情報]
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日外会誌. 87(1): 61-66, 1986
原著
肝切除後における門脈血中膵ホルモン動態とラ島の形態学的変化に関する研究
I.内容要旨体重12~15kgの雑種雄成犬を用いて,肝切除術を施行,同一成犬を,術前,術後1週,術後1カ月に再開腹し,膵組織を採取,酵素抗体法にて検索した.
又同時に,術前,術後1週,術後1カ月に,50%ブドウ糖液,0.5g/kgを末梢静脈より静注し,前,5分,15分,30分,45分,60分に門脈血を採取し,insulin,glucagon,somatostatin,血糖値について検討した.
門脈血中術前空腹時血糖値は113±8mg/dl,術後1週88±2mg/dl,術後1カ月109±12mg/dl,糖消失率K値は,術前1.83±0.23,術後1週1.31±0.08,術後1カ月1.80±0.29であり,術後1週ではK値の低下が認められた(p<0.05).
門脈血中insulin値は,術前空腹時insulin値21±7μu/ml,術後1週12±3µu/ml,術後1カ月17±4µu/mlで,糖負荷後のinsulin分泌増加量Σ⊿IRIで示すと,1,829±297µu・min/ml術後1週619±148µu・min/ml,術後1カ月2,950±493µu・min/mlで分泌反応は1週で低下し(p<0.05),1カ月で増加していた(p<0.05).Glucagon値は,術前空腹時142±31pg/ml,術後1週100±11pg/ml,術後1カ月113±12pg/ml,術前空腹時門脈血中somatostatin値は,17±4pg/ml,術後1週27±6pg/ml,術後1カ月96±21pg/ml,と著明に増加していた(p<0.05).
酵素抗体法による膵Langerhans島(以下ラ島と略す)の面積の検索では,術前ラ島の面積は486±23µmm
2,術後1カ月で2,236+98µmm
2と約4.6倍に肥大していた(p<0.01).又insulin,glucagon分泌細胞は,分泌穎粒の増加を認めた.Somatostatin分泌細胞は,術後1カ月で細胞数は2.8倍に増加し,分裂現象が見られた.
肝切除後には,ラ島分泌細胞に多大な変化がもたらされる事が判明した.
キーワード
門脈血中膵ホルモン値, 肝切除, 膵ランゲルハンス島の形態変化
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