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日外会誌. 82(8): 841-849, 1981


原著

女性化乳房症177例の臨床的検討

大阪大学 第2外科

高塚 雄一 , 弥生 恵司 , 古妻 嘉一 , 梶 正博 , 田根 叡 , 相川 隆夫 , 神前 五郎

(昭和56年3月4日受付)

I.内容要旨
最近8年間に当教室で経験した女性化乳房症177例を対象とし,① 思春期型肥大, ② 内分泌腺疾患に合併するもの, ③ 背後疾患および薬剤の明らかなもの,そして, ④ 特発性肥大の4病型に分類し,各病型別にそれぞれの臨床的特徴について比較検討した. 1) 年齢分布では30歳代にピークがみられ,20歳未満では多くのものが思春期型であり,高齢者ほど背後疾患および薬剤によるものが増加する傾向にあつた. 2) 病悩期間は各病型間に差はなく,68.5% (74/108) は3カ月以内に来院していた.3) 女性化乳房症の初発症状は大部分のものが自発痛および圧痛を伴う腫瘤形成であり,無痛性の腫瘤は内分泌腺疾患に合併するものに特徴的であつた. 腫瘤の発生部位としては片側性が73.5% (130/177) と圧倒的に多かつたが,両側性のものも47例 (26.6%) あり,ことに内分泌腺疾患に合併するものの66.7%が両側性の発生であつた. 腫瘤の大きさでは177例中94例(53.1%)が2~5cmに属しており,病型別では思春期型のものは2cm未満のものが多く, 逆に内分泌腺疾患に合併するものは大きな腫瘤を形成する傾向にあつた. 4) 女性化乳房症患者の尿中17OHCSおよび17KS値はほぼ正常域にあり,本症に特徴的な内分泌学的所見はみられなかつた.5) 女性化乳房症に対するホルモン治療の有効率は全体としては88.9%と非常に高かつたが,内分泌腺疾患に合併するものに対する有効率は25%にすぎなかつた.以上より,女性化乳房症に対する治療方針としては,① 思春期型は数力月のうちに自然消腿するものが多く,経過観察のみとし, ② 内分泌腺疾患に合併するものには,原疾患の治療とともに女性化乳房症に対しては積極的に腫瘤の摘出を行こない,また, ③ 背後疾患や薬剤の明らかなものは可能な限り,疾患の治療や薬剤の中止,変更を優先するが,これらが不可能な場合にはホルモン治療あるいは摘出をする.④ 特発性肥大にはホルモン治療を原則としている.

キーワード
女性化乳房症, 尿中17-OHCS, 尿中17-KS, ホルモン療法


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