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日外会誌. 82(8): 850-859, 1981


原著

冷却マニトール加ラクトリンゲル液冠灌流法の心筋保護効果について

1) 和歌山県立医科大学 胸部外科
2) 和歌山県立医科大学 第1解剖

松岡 純生1) , 滝本 幹之1) , 桜井 武雄1) , 西村 治1) , 太田 久雄1) , 得律 修一1) , 山岡 慶之1) , 児玉 憲1) , 鈴木 淑男1) , 岡田 一男1) , 榎本 克己1) , 岡田 浪速1) , 廣鰭 但見2)

(昭和56年1月26日受付)

I.内容要旨
冠血流遮断時の心筋保護においては急速かつ均等な心筋の冷却と血流遮断解放後の冠循環系末梢抵抗の十分な軽減が望ましいものと考え,冷却マニトール加ラクトリンゲル液冠潅流法につき動物実験と臨床の両面より検討を加えた.実験Iにおいては人工心肺血による冠潅流法と大動脈遮断後,冷却マニトール加ラクトリンゲル液(400mOsm)による落差冠潅流法とを比較検討した.実験Iにおいては落差冠潅流法のマニトール付加量について比較検討した.
A群4℃ラクトリンゲル液 (270mOsm),B群4℃ラクトリンゲル液1,000ml+20%マニトール200ml (400mOsm),C群4℃ラクトリンゲル液1,000ml +20%マニトール500ml (600mOsm) 等を作成し検討した. Vmax,左室拡張終期圧,心拍出量, LDH1+2値, CPK-MB値,組織所見等につき術前と術後の間に有意差はなく,冷却マニトール加ラクトリンゲル液冠潅流法においては人工心肺血による冠潅流法の場合と同様の心筋保護効果が認められた.A群の左室拡張終期圧の術後値の有意の上昇は左室ポンプ機能の低下によるものと考えられた. C群の術後CPK-MBの検出は心筋細胞の障害によるものと考えられた.ミトコンドリアスコアーはA群86,B群93,C群51となつた. B群がもつとも軽度の心筋障害を示した.
臨床においては局所冷却を併用することにより最長144分の大動脈遮断例を含め25例に良好な結果を得た. CPK-MBは術後48時間以内に全例術前値に回復した. 6症例につき左室乳頭筋を検討した.遮断直後と遮断解放直前においてミトコンドリアには差がなく十分な心筋保護効果が認められた.

キーワード
心筋保護, 高張マニトール, 冠潅流法


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