[書誌情報] [全文PDF] (9759KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 82(8): 823-840, 1981


原著

Sepsisのhyperdynamicな循環動態に関する実験的研究
-代謝との関連を中心に-

東京大学 医学部第1外科学教室(指導教官:草間 悟教授)

望月 英隆

(昭和56年3月5日受付)

I.内容要旨
壊疸性化膿性胆嚢炎によるsepsis モデルをイヌに作製し, hyperdynamic(hyper.)な循環動態を示すsepsis時の心機能やエネルギー代謝について検討を加え,以下の知見を得た.
1) 23頭のsepsis犬のうち21頭は, 第4病日には心拍出量増加,末梢血管抵抗低下, 血圧低下の特徴をもち,臨床のseptic shock早期に極めて類似したhyper.型の循環動態を呈した. 2) このhyper.型のsepsis犬は低血糖・低インスリン血症を呈したが末梢のブドウ糖利用亢進が認められ, またブドウ糖投与によつて末梢の糖利用は更に増加して, 糖利用障害やインスリン抵抗性はみられなかつた. spsis時にみられるエネルギー不足は筋蛋白などの蛋白分解亢進で補充されていることが示唆された.3) hyper.型のsepsis犬の心臓は, 輸液による前負荷過剰で心筋抑制が生じ易い特徴を有し, これはエネルギー源としてのブドウ糖投与によつてかなり改善されることが示めされた.4) dopamine投与によつてhyper.型の循環動態を更にhyper.にすると,末梢のエネルギー代謝が好転することが示めされた. 5) sepsis犬にブドウ糖やブドウ糖とアミノ酸を中等量投与しつつ栄養管理すると,心機能が亢進しよりhyper.型の循環動態が得られるのみならず,この際エネルギー代謝の改善と末梢筋組織における側鎮型アミノ酸のsparing効果も認められた.
以上より,sepsis時のhyper.型の循環動態は,生体に酸素やエネルギー基質を供給し, 病原微生物に対する防御反応や恒常性維持反応のために極めて合目的々な生体反応であり, sepsis時の循環動態の管理はこのhyper. な状態を維持することが肝要と考えられた. その際エネルギー基質を充分に与えることが大切で,アミノ酸投与の意義についてはなお今後の検討を要するが,少なくとも充分量のブドウ糖を投与することが不可欠であると考えられた.

キーワード
Septic shock, Hyperdynamic state, 心筋抑制, ブドウ糖利用亢進, BCAA sparing効果


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。