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日外会誌. 81(1): 25-38, 1980


原著

食道癌の術前合併療法の研究

千葉大学 第2外科(主任:佐藤博教授)

奥山 和明

(昭和54年5月7日受付)

I.内容要旨
千葉大第二外科では1958年以来食道癌の術前合併療法として,照射単独療法, BLM単独療法及び照射+BLM療法を経て, 1975年以後は教室独自の照射+BLM+免疫療法をおこなつている. 検索対象はRegular BLMを使用し始めた1968年から1978年までの食道癌切除例の内の167例である. 著者はこの検索対象を術前合併療法別にI群;術前合併療法なし, II群;照射単独, III群; BLM単独,IV群;照射+BLM,V群;照射+BLM+免疫療法(PS-K又はBCG-CWS),の5群に分類し, 各術前合併療法群の原発巣とリンパ節への組織学的効果の比較検討と,転移リンパ節に有効なoil BLMの検討もあわせて行ない次の結論を得た. 術前合併療法の原発巣に対する効果はll,III群に比較してIV,V群の有効率が高く,特にV群では80%に有効である.
リンパ節転移率に対しては,原発巣に対する効果がEf2,Ef3の効果を示す症例ではI,III群のn1,2(+)の転移率50%に比較して,II群33.3%,IV群21.4%,V群21.1%の順に転移率が低下している. 又転移リンパ節に対する効果でも照射野内転移リンパ節に対してはll,IV群のEf2,Ef3 を合わせた有効率が10から20%であるのに対してV群の有効率は66.7%と高率である. しかしながら照射野外転移リンパ節への有効率は,Regular BLMではV群でも有効率は低くなつている, そこでoli BLMの動物実験によりRegular BLMにくらべ血中及びリンパ節に長時間高濃度を継持することが判明したoil BLMをV群のRegular BLMにかえて使用したところ臨床例でも照射野外転移リンパ節に有効例が認められている. 従つて食道癌の術前合併療法としてはV群のRegular BLMをoil BLMにかえた照射+oil BLM+免疫療法が原発巣及びリンパ節双方に効果が最も期待出来る術前合併療法といえる.

キーワード
食道癌, ブレオマイシン, 油性ブレオマイシン, リンバ節転移, 食道癌の術前合併療法


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