[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (577KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 124(1): 116-117, 2023

項目選択

定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(8)「手術教育のイノベーション」
3.Uniportal VATSの習得と発展を目指した手術教育プログラム―動物心肺ハイブリッドモデル・VR・オンラインカンファレンスの活用―

近畿大学 医学部外科学講座呼吸器外科部門

千葉 眞人 , 福田 祥大 , 小原 秀太 , 濱田 顕 , 下治 正樹 , 須田 健一 , 武本 智樹 , 宗 淳一 , 光冨 徹哉 , 津谷 康大

(2022年4月16日受付)



キーワード
Uniportal VATS, Single port VATS, Animal Model, Virtual Reality

<< 前の論文へ次の論文へ >>

I.はじめに
Uniportal VATS(U-VATS)など,新しい手術手技の習得と発展には,入念な準備とトレーニングプログラムの構築が必須である.当院では,「ブタ心肺ブロックと肋間モデルによる手術トレーニング法」「VR (Virtual Reality)技術を用いたU-VATS virtual手術見学動画」「U-VATS手術ビデオのオンラインカンファレンス」を構築・実施し,U-VATS手技の向上と発展を目指している.

II.ハイブリッド心肺の実際
平均的な日本人男性の胸郭を模した肋間モデルは,内部に心肺ブロック固定用のアームが存在し,回転により両側の手術に対応可能である.通常の心肺ブロックは血管に張りがないため,剥離の臨場感を増加させる目的で,通常の心肺ブロックに動脈血・静脈血に模した赤青2色のジェル状の液体を注入して張りのある肺血管を再現した“ハイブリッド”心肺ブロックを開発している.ブタの左肺上葉(前葉)は血管の分岐が人間と類似しているため最もリアルな実習が可能であるが,われわれの経験では下葉や中葉や,左上大区などにも実施可能である.

III.ハイブリッド心肺を利用したトレーニングとU-VATS気管支形成への応用
U-VATS導入当初より50回以上の心肺ブロックの実習を行い,手技の定着を図った.また,ブタ心肺ブロックを用いた気管支形成実習を3回行って実現可能性を確認した後に,U-VATSスリーブ右上葉切除の第1例目を実施し,成功裡に終了している.

IV.VRを用いたU-VATS手術見学動画の作成
手術見学は,手術動画では得られない様々な手術室情報を得ることができる点で大変有用である一方,参加者の金額的・時間的負担が大きいことが問題である.さらに,コロナ禍では病院見学も制限され,実施もままならない.そこで,全周囲撮影用特殊カメラ数台を使用し,VR(Virtual Reality)技術を持つ専門チームと協力して,U-VATS virtual手術見学動画を作成した.Virtual見学者は様々な視点に移動して手術を見学できるため,多角的な学習が可能である.

V.オンラインビデオカンファレンスの利用
U-VATS経験者は少なく,客観的評価が困難であるが,経験のある施設と定期的にオンライン・ビデオカンファレンスを実施することで,双方向で技術的問題点を討議し,手術手技の更なる改善が可能となる.実践的なモデルの開発は,基本手技だけでなく,複雑な手技のトレーニングに有用であり,いずれも患者安全に直結する.VR技術やオンライン技術の活用により時間的・金銭的ロスが減少するため,トレーニング効果は飛躍的に向上する.

VI.おわりに
本発表では,U-VATSの習得と発展を目指したわれわれの取り組みを動画を供覧しつつ呈示し,今後の手術教育を考察する.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。