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日外会誌. 124(1): 102-105, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(7)「外科発展の礎―外科志望者増加のための取り組み」
7.教室における外科へ興味を持ってもらうための取り組み・工夫

鹿児島大学 消化器・乳腺甲状腺外科

又木 雄弘 , 蔵原 弘 , 伊地知 徹也 , 川﨑 洋太 , 田辺 寛 , 中条 哲浩 , 新田 吉陽 , 有上 貴明 , 盛 真一郎 , 大塚 隆生

(2022年4月16日受付)



キーワード
外科医師, 減少, 取り組み

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I.はじめに
厚生労働省のホームページで医師数の推移をみると,過去26年で外科医は約3割減少しており1),鹿児島県でも,過去18年で3割の外科医の減少を認めている2).一方,教室の過去15年の入局者数をみると,年平均4.9名であり,比較的入局者を確保できていた.そこで,今回,学生・研修医への実習内容,外科に対するアンケートをもとに,外科医確保のための取り組みを紹介する.

II.ポリクリ時の実習内容
5年生4~5名ずつ,2週間ごとのローテーションであるが,週はじめの2回,結紮縫合実習を行い,外科的手技の基本をマスターしてもらう.また,食道,胃,大腸,肝,胆膵,乳腺,甲状腺の七つの臓器ごとにミニレクチャ―を行い,代表的な疾患や典型的な手術動画を供覧し,当科で扱う疾患に触れてもらう.更に手術日には,「手術室ツアー」と称し,手術説明を受け持つ医師が,手術内容を詳細に解説しながら案内している.その後,実際の手術に参加してもらい,昼頃には手をおろすようにしている.長く手術場に拘束することなく,短時間で集中的に行うよう配慮している.

III.学生・研修医への外科に関するアンケート
対象は鹿児島大学医学部の4~6年生および研修医の111名で,医学部4/5年生が58名,6年生が22名,研修医1年目が14名,2年目が17名であった.
① ポリクリ中,有用であった研修は?
結紮縫合45名(53%),手術室ツアー34名(40%),手術参加33名(38%)の順であり,外科的手技・手術関連が有用との回答であった(図1a).
② ポリクリ時の研修内容で,希望することは何か?
結紮や縫合の実習41名(48%),診断から術式決定までの学習38名(45%),手術器具の説明や実際の使用33名(39%)の順であり,手術への興味が伺われた(図1b).
③ 外科に興味ある方へ,なぜ外科がいいと思うか?
手術をしたいが47名(67%)と最も多く,何でもできるようになりたい22名(31%),恰好いい20名(28.6%)の順であった(図1c).
④ 仮に外科を選ぶとして,弊害は何か?
体力に不安が63名(62%),労働時間的拘束60名(59%),休みがもらえるかの懸念57名(56%)の順であった(図1d).外科選択の弊害として,体力とともにwork life balanceへの不安が多く聞かれた3)

図01

IV.教室での外科医獲得のための工夫・取り組みの紹介
1.4外科の取り組み
鹿児島大学病院の23の臨床診療科のうち,消化器・乳腺甲状腺外科,心臓血管外科,呼吸器外科,小児外科の四つの外科系教室が一丸となって,外科の魅力の伝授,共同での勧誘活動,情報共有を行っている.具体的活動内容は,月一回の4外科持ち回りの勉強会,研修医向けの臨床研修,専門医プログラムの説明会,関連病院・OBの理解と協力を目的とした年3回の外科医療体制連絡協議会の開催で,研修医への外科の啓蒙活動を行っている.
2.外科の活動内容の伝授
外科医に期待される役割の紹介を積極的に行っている(図2).「手術」以外にも,ベッドサイドや透視室で行う「手技」や各種「検査」,術前・術後の「全身管理」や「救急」にも対応し得ること,また外科医は地域医療の大きな担い手,最後の砦であることを伝えている.
3.教室のホームページの工夫
学生・研修医がアクセスしやすく興味を持ちやすい構成とし(図3),月1回ショートストーリーを作成し,医局員の顔や名前を模した登場人物による対話で医療に関する時事を紹介している.また「私が外科に決めた理由」という表題で,若手医師が外科を決意した経緯を写真付きで紹介しており,手術が楽しい,全身管理ができる,地域医療やチーム医療のすばらしさを感じたなど様々で,その動機に生で触れられる.
4.情報収集・共有
勧誘のチーフを決め,外科に興味を持つ学生・研修医の情報を集め,大学のみならず関連病院とも密に連携し,細やかなケアを多くの医師で行っていくよう努めている.

図02図03

V.おわりに
外科医を増やす試みとして,手術をはじめとした手技の伝達・教育が重要である4).その際に学生・研修医への声掛けや,スタッフ一丸となって迎え入れる熱意と細やかな配慮が肝要と思われる.

 
利益相反:なし

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文献
1) 厚生労働省ホームページ.2022年5月22日. https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/toukei/
2) 鹿児島県の医師の現状(鹿児島県ホームページ).2022年5月22日. https://www.pref.kagoshima.jp/ae03/kenko-fukushi/doctorbank/taisaku/ktiikiiryou1.html
3) 上尾 裕昭,小西 敏郎,金子 弘真,他:全国の若手外科医アンケートからみたwork life balanceの改善策と外科医減少抑制策の提案.日臨外会誌,82:1-13, 2021.
4) )江島 豊,南 正人,長瀬 清,他:医学部医学科学生に対する手術医学教育実施状況調査.日本手術医会誌,42: 34-39, 2021.

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