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日外会誌. 124(1): 99-101, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第122回日本外科学会定期学術集会

特別企画(7)「外科発展の礎―外科志望者増加のための取り組み」
6.外科医増加のために外科基幹病院ができること

国立国際医療研究センター 外科

山田 和彦 , 野原 京子 , 榎本 直記 , 八木 秀祐 , 加藤 大貴 , 伊藤 橋司 , 大谷 研介 , 三原 史規 , 合田 良政 , 北川 大 , 竹村 信行 , 清松 知充 , 國土 典宏

(2022年4月16日受付)



キーワード
外科医減少, 外科専攻医, タスクシフト, 社会人大学院

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I.はじめに
外科医減少の状況が続いている.年々増える業務により外科医の疲弊した姿を見せていることもその一つの要因かもしれない.新たな外科医を増やしていくためのサポートや魅力を常に発信していく必要性がある.大学病院と比較して外科専攻医の教育を行う一般病院において重要とされることは,現場第一主義である.悪性腫瘍に対する外科治療だけではなく,救急腹部疾患に対する治療,化学療法,緩和医療,ハイリスク症例,医療連携など様々な場面に遭遇する.今回若い外科医にどう魅力を訴えていくのか,外科専攻医を育成する基幹病院である当院での取り組みを紹介したい.

II.外科医としてのロードマップ
当院は外科専攻医を養成する基幹病院である.図1に当院の外科医のロードマップを示す.初期臨床研修後の外科専攻医3年の間に,6臓器(上部,下部,肝胆膵,乳腺,心臓,呼吸器)を2カ月ずつ研修する.他に連携施設で6~12カ月の研修,小児外科研修,残りは自由選択として,希望する領域をローテートする.希望は様々で,院内にある国際協力局や研究所での基礎研究を希望する専攻医もいる.外科専攻医の出身は院内からだけでなく,外部施設からも応募があり,バランスが取れている.同学年の専攻医がいることは,お互いの励みになり,将来の貴重な仲間となることを期待している.医師6年目以降はフェロー医として勤務を継続するか,連携施設,大学病院,他施設などを自身で選択する.

図01

III.タスクシフトについて
当院での取り組みを表1に示す.大きく分けると,病院全体のタスクシフトの取り組みと,外科での取り組みに分けられる.多くの会議は勤務時間内に行われ,担当医制からチーム制へ移行し,多職種との連携を重要視している.さらに勤務に対するタスクシフトとして,入退院センターでは,詳細問診,薬剤チェック,麻酔科診察や栄養評価が行われている.さらに,医療書類の記載,特定機能看護師の導入により,仕事の一部をサポートしてもらっている.
外科での取り組みでは,月1回の有給取得を義務付けて,夜間手術明けにはできる限りの代休を取るようにしている.時間外勤務のチェックは月50時間以上の回数が年に6回以内になるように,病院全体でチェックされている.女性外科医が活躍できるように産休,育休の他にも時短勤務などを行うことで外科医としてのキャリアが切れない配慮をしている.手技としては,初期研修医からの外科的処置の指導(CV,PICC挿入,縫合実習)や日本消化器外科学会が主催している消化器外科手術手技講習会(JESUS)への積極的な参加を勧めている.地方会,全国学会,海外学会での発表,論文報告も将来を考えると重要である.当院では併設している研究所との共同研究をしながら,基礎研究にも興味を持つことも勧めている.希望者には外科専攻医研修中から連携大学院への入学と学位取得を目指す.仕事と研究の両立は決して楽ではないが,リサーチマインドをつけるには,若い時こそ絶好の時期であり,希望者には積極的に進めている.

表01

IV.成果
2018年に外科専門医制度がスタートし,順調に専攻医が入局してくれるようになった(図2).若手医師の業績も2021年英文13編,邦文4編と業績が得られている.

図02

V.おわりに
種々のサポートや魅力を発信してきたことで,新専門医制度における外科専門医希望者の獲得につながっている.ただ対策をしただけでは不十分で,先輩外科医の役目は重要であり,専門にこだわらず,多くの選択肢を示し,経験してもらうことが外科医希望者増加につながっていると考える.

 
利益相反:なし

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