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日外会誌. 123(1): 70, 2022

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手術のtips and pitfalls

「肺尖部胸壁浸潤肺癌に対する手術の tips and pitfall」によせて

自治医科大学 呼吸器外科

坪地 宏嘉



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肺尖部胸壁浸潤肺癌は,胸郭出口の重要な血管や神経浸潤を伴う元来予後不良な腫瘍ですが,集学的治療により近年その治療成績は向上してきました.肺癌診療ガイドラインによれば,切除可能な肺尖部胸壁浸潤肺癌に対しては術前の化学放射線療法後の外科治療が推奨されています.そのため手術に際しては,血管,神経,肋骨,胸椎など隣接臓器への腫瘍浸潤に加え,術前治療による癒着のため,正確な解剖の知識と高い技術が要求されます.
肺尖部胸壁浸潤肺癌に対してどのようなアプローチを選択するかは,この疾患に対する手術の重要なポイントです.歴史的にも様々な方法が提唱されてきましたが,大きく前方と後方からのアプローチ法に区分されます.前方アプローチは,通常肺尖前方に主座をおき鎖骨下動静脈や椎骨動脈の剥離や切除を要する症例に,後方アプローチは,肺尖後方の腫瘍が対象で,胸椎や腕神経叢近傍に腫瘍が及ぶ場合に主に選択されます.腫瘍の部位によってはどちらのアプローチを選択すべきか判断に迷うことがありますし,浸潤範囲が広範に及ぶ際には双方を併用することもあります.
また,浸潤臓器の範囲に応じて,他科に援助を仰ぐ場合もあります.鎖骨下動脈や椎骨動脈浸潤のある場合は心臓血管外科や脳外科に,胸椎への浸潤がある場合は整形外科に,それぞれの状況に応じて術前評価と当該臓器の切除再建を依頼する必要があります.
このように肺尖部胸壁浸潤肺癌の手術を行うにあたっては様々な課題がありますが,一施設当たりの症例数はどうしても限られます.腫瘍を確実に摘除するための要点や,血管損傷や神経損傷などの危険を回避するための工夫を学ぶことは有益と考え,今号の「手術のtips and pitfalls」では経験豊富なお二人の先生に執筆をお願いしました.岡田克典先生には「前方アプローチ」を,棚橋雅幸先生には「後方アプローチ」について,それぞれのtips and pitfallsを解説していただきました.

 
利益相反:なし

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