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日外会誌. 121(3): 287, 2020

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特集

大腸癌に対する内視鏡手術の進歩

1.特集によせて

順天堂大学 下部消化管外科

坂本 一博



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大腸癌に対する腹腔鏡下手術は1991年にJacobsらが初めて報告し,その後急速に世界中に普及した.本邦では1992年に渡邊昌彦らによって最初の大腸癌手術が行われた.その後,内視鏡手術の技術の向上と機器の開発により,大腸癌に対する腹腔鏡下手術は適応が拡大され,現在多くの施設で行われるようになってきた.腹腔鏡下手術は,開腹手術に比べ,術後疼痛が少なく,術後入院期間が短く,社会復帰が早く,術後のquality of life(QOL)が良好であることが報告されている.しかし,長期予後に関して開腹手術に対する腹腔鏡下手術の優位性は,臨床試験において明確な結果は出ていない.大腸癌治療ガイドラインでは,「腹腔鏡下手術は大腸癌手術の選択肢の1つとして,開腹手術と同等に行うことを弱く推奨する」と記載されるに留まっている.しかし,実臨床において腹腔鏡下手術は年々増加し,日本内視鏡外科学会のアンケート調査では開腹手術の症例数を超えている.そして,導入から四半世紀が経過した現在では,腹腔鏡下手術はより低侵襲性を求めたReduced port surgery(RPS),あるいはより高度な手術へと進化してきた.
本特集では,大腸癌に対する標準的な多孔式腹腔鏡下手術から進化を続けている内視鏡手術手技の中で,RPSでは「単孔式手術」,「細径鉗子を用いた手術」,吻合法では「右側結腸癌に対する体内吻合術」,リンパ節郭清では「横行結腸癌に対するICG蛍光法を用いたリンパ節郭清」,「進行直腸癌に対する側方郭清術」,検体摘出では「Natural orificeから摘出するNOSE(Natural orifice specimen extraction)」,アプローチ法では「TaTME(Trans anal TME)」を取り上げた.そして,それぞれのエキスパートの先生に,手術手技や成績について解説していただいた.

 
利益相反
奨学(奨励)寄附金:大鵬薬品工業株式会社

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