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日外会誌. 126(2): 138-143, 2025


特集

外科医の働き方改革

3.消化器外科医の現状と課題―医師不足への対応と将来展望

北里大学医学部 上部消化管外科学

比企 直樹

内容要旨
消化器外科医はがん手術および急性疾患の対応を中心に重要な役割を果たしているが,日本ではその医師数が減少しており,業務負担の増加が顕著となっている.食道がん,胃がん,大腸がんをはじめとする消化管腫瘍や肝胆膵腫瘍の治療を行う一方,緩和ケアや急性腹症への対応も求められる.その一方で,20年間で消化器外科医は20%以上減少し,医師全体の増加傾向と逆行している.医師不足の背景には,業務過多,賃金や評価に対する不満,長期的なキャリアの不透明性,家庭やプライベートの時間を確保できない環境が挙げられる.
若手医師の専門選択離れに歯止めをかけるため,学会は教育支援やキャリアパスの明確化を図る一方,報酬や労働環境の見直しが急務である.加えて,緊急手術や高難度手術に対するインセンティブの導入が必要であり,医師の待遇改善と適正な報酬体系の確立が求められる.また,外来業務の縮小や学会活動の合理化により,手術技術の向上や研究に集中できる環境を整備することも重要である.
今後,消化器外科医の役割分担や手術の集約化,地域医療の均等化を進めることが,医療の質向上および地域格差の解消に寄与すると考えられる.これらの施策の実現には,国および学会による総合的な対応が必要である.

キーワード
消化器外科医, 医師不足, 労働環境改善, キャリアパス, 報酬体系


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