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日外会誌. 126(2): 131-137, 2025


特集

外科医の働き方改革

2.心臓血管外科における働き方改革

国立病院機構函館医療センター院長,3学会構成心臓血管外科専門医認定機構代表幹事 

椎谷 紀彦

内容要旨
心臓血管外科専門医認定機構が毎年実施してきたアンケート調査(回答率100%)では,新規申請者(≒専攻医)の週平均労働時間は66.1時間,更新申請者でも59.2時間で,全診療科の中で最も長時間である.対策として,①認定修練施設の症例数要件引き上げと専攻医の再配置により緩徐に施設集約化を進め,医療の質・研修効率の確保と働き方改革を両立する,②タスクシフトを認定要件化する,③労働時間減少による収入減の対策としてインセンティブ確保を目指し,高次専門医認定制度(3階部分)を構築する,の3点を掲げ,制度改革に取り組んできた.①は既に2023年から実施し,2028年には認定修練施設が22%減少し,心臓胸部大血管領域基幹認定施設は半減する見込みである.専攻医を2年以上基幹施設に在籍させることで,緩徐に集約化が進むことを期待している.②では,「胸部・心臓・血管外科領域特定行為研修修了看護師登録制度」に登録した看護師が週40 時間以上診療科病棟業務に専従することと,semi-closed 集中治療室において特定行為研修修了看護師または集中治療専門医により24 時間体制で治療が行われていることを求める方向で検討中である.心臓血管外科医の多くが,病棟業務の代行とICUのon call体制を望んでいるためである.働き方改革の理念である,医療の質と安全性の向上,持続可能な医療提供体制の構築を具現するため,法律で労働時間を制限しなくても,健全に医療が行われる環境が構築されることを望むものである.

キーワード
施設集約化, タスクシフト・シェア, 特定行為研修修了看護師, クローズドICU, インセンティブ


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