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日外会誌. 119(3): 293-298, 2018
特集
外科医のがん研究
7.血清Trefoil Factor Family(TFF)は血液検査による乳がん検診を可能にするのか
内容要旨日本の乳がん検診では,視触診,マンモグラフィ,乳腺エコーを基本としている.もし血液検査で乳がんの有無を調べることができれば,乳がん検診は非常に簡便になり,乳がん検診受診率の向上も期待される.採血で測定可能なCEA,CA15-3など,既存の腫瘍マーカーは乳がんの早期発見には有用ではない.われわれは,新たな血清バイオマーカーとして,Trefoil Factor Family(TFF)という三つ葉のクローバー様(trefoil)構造を有したペプチドに着目した.TFFには,TFF1,TFF2,TFF3のサブタイプがあり,消化管などの粘液産生細胞より分泌され,粘膜の保護,再生に関連する一方で,がん組織においても発現が確認されている.このTFF1,TFF2,TFF3を血清中で測定し,乳がん患者と健康な検診受診者で比較すると,乳がん患者の血清TFF1,TFF3値は,健康な検診受診者の値よりも有意に高値であり,乳がん患者の血清TFF2値は検診受診者より有意に低値であった.血清TFF1,TFF2,TFF3のAUCはそれぞれ0.69,0.83,0.72で,血清TFF1,TFF2,TFF3値を組合せたAUCは0.96と高値であった.血清TFF1,TFF2およびTFF3は,それぞれ単独でも,さらに組合せることで,乳がんスクリーニングの有効なバイオマーカーとなりうることが示唆された.
キーワード
乳癌スクリーニング, 血清バイオマーカー, 早期発見, TFF1,2,3
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