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日外会誌. 119(3): 293-298, 2018


特集

外科医のがん研究

7.血清Trefoil Factor Family(TFF)は血液検査による乳がん検診を可能にするのか

1) 東京大学 乳腺内分泌外科
2) 東京大学 消化管外科
3) 国立国際医療研究センター 臨床研究センター医療情報解析研究部
4) 東京大学医学部附属病院 病理部
5) JCHO東京メディカルセンター 
6) 国際医療福祉大学三田病院 乳腺センター
7) NTT東日本関東病院 予防医学センター
8) NTT東日本関東病院 消化器内科
9) 大塚製薬徳島研究所 
10) 獨協医科大学埼玉医療センター 乳腺センター
11) 国立国際医療研究センター病院 乳腺内分泌外科

石橋 祐子1) , 菊池 弥寿子1) , 丹羽 隆善1)5) , 西岡 琴江1) , 大津 洋3) , 池村 雅子4) , 内田 惠博6) , 三浦 洋菜2) , 愛甲 丞2) , 郡司 俊秋7) , 松橋 信行8) , 大本 安一9) , 佐々木 毅4) , 小川 利久10) , 多田 敬一郎1)11) , 瀬戸 泰之2) , 田辺 真彦1) , 野村 幸世2)

内容要旨
日本の乳がん検診では,視触診,マンモグラフィ,乳腺エコーを基本としている.もし血液検査で乳がんの有無を調べることができれば,乳がん検診は非常に簡便になり,乳がん検診受診率の向上も期待される.採血で測定可能なCEA,CA15-3など,既存の腫瘍マーカーは乳がんの早期発見には有用ではない.われわれは,新たな血清バイオマーカーとして,Trefoil Factor Family(TFF)という三つ葉のクローバー様(trefoil)構造を有したペプチドに着目した.TFFには,TFF1,TFF2,TFF3のサブタイプがあり,消化管などの粘液産生細胞より分泌され,粘膜の保護,再生に関連する一方で,がん組織においても発現が確認されている.このTFF1,TFF2,TFF3を血清中で測定し,乳がん患者と健康な検診受診者で比較すると,乳がん患者の血清TFF1,TFF3値は,健康な検診受診者の値よりも有意に高値であり,乳がん患者の血清TFF2値は検診受診者より有意に低値であった.血清TFF1,TFF2,TFF3のAUCはそれぞれ0.69,0.83,0.72で,血清TFF1,TFF2,TFF3値を組合せたAUCは0.96と高値であった.血清TFF1,TFF2およびTFF3は,それぞれ単独でも,さらに組合せることで,乳がんスクリーニングの有効なバイオマーカーとなりうることが示唆された.

キーワード
乳癌スクリーニング, 血清バイオマーカー, 早期発見, TFF1,2,3


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