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日外会誌. 93(11): 1367-1371, 1992


原著

血中Leukotriene B4の変動とエンドトキシン
投与ラットにおける魚油の効果

近畿大学 医学部第2外科学教室

浦田 尚巳 , 中谷 公一 , 今野 元博 , 富吉 浩雅 , 園部 鳴海 , 山田 幸和 , 笠原 洋

(1991年7月6日受付)

I.内容要旨
魚油中に含まれるeicosapentaenoic acid (EPA)には血漿脂質低下や抗動脈硬化の他に抗炎症作用もあるといわれる.それは,EPAがarachidonic acid (AA)に代わって5-lipoxygenaseの基質となり,AAから合成されるleukotriene (LT) B4より生物学的活性の低いLTB5が産生されることによる.そこで魚油摂取動物に対するエンドトキシン (lipopolysaccharide;L PS)投与時の影響を検討した.
Wistar系雄ラットに6週齢より,低脂肪食+15%サフラワーオイル(SO群; n=30)または低脂肪食+ 15%タラ肝油CFO群; n=30) を6週間投与後, LPS10mg/kgを生理食塩水0.8mlに溶解して腹腔内に投与した. LPS投与後2時間, 4時間で白血球数および血中のLTB4値を測定した.対照群は同実験食で,生理食塩水のみを腹腔内に注入した.
ラットの生育に実験食による差はなかった.FO群の多核白血球(PMN)中のAA量はSO群に比較して有意に少なく(p<0.001),EPA量はAAより多量で,EPA/AA比1.76であった.SO群のEPA最は測定限界以下であった.白血球数は両群においてLPS投与後2時間より有意の減少を認めたが(p<0.001), 4時間後の値ではSO群(2,033±151/mm3)がFO群(3,183±624/mm3)に比較して有意に減少していた(p<0.01).血中LTB4値は両群ともにLPS投与後4時間で有意に増加し(SO群;1,219.8±167.3pg/ml, FO群; 600.0±109.0pg/ml: p<0.001),特にSO群においてFO群より高かった(p<0.001).
魚油投与のFO群において,PMNの細胞膜におけるAA含有量が減少し,EPA含有量は増加する.この状態では,LPS投与時にアラキドン酸カスケードの代謝産物の変化,すなわちLTB4の産生減少が起こり,これが白血球数減少の抑制につながったと思われた.

キーワード
魚油, eicosapentaenoic acid, lipopolysaccharide, leukotriene B4


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