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日外会誌. 93(11): 1361-1366, 1992


原著

敗血症と蛋白質アミノ酸代謝
ー蛋白質代謝回転,ロイシン,グルタミン代謝の面からの検討ー

久留米大学 医学部第1外科

吉田 祥吾 , 溝手 博義 , 掛川 暉夫

(1991年6月24日受付)

I.内容要旨
ラット敗血症モデルを用いて,各種安定同位元素,あるいは非安定同位元素を投与して,蛋白代謝動態,ロイシン,グルタミンの代謝動態について検討した.
ラットを3日間完全静脈栄養により管理した後に,敗血症群には1010 E. coliをTPNカテーテルから注入した.ラットは敗血症後24時間で犠死せしめたが,犠死直前に1-13C-leucine(4mg/hr),5-13C-glutamine(2mg/hr),1, 2-13C-leucine(4mg/hr)あるいは,U-14C-leucine(2.0uCui/hr)を定速持続注入により投与した.
全身蛋白合成速度は敗血症群(S)と対照群(C)の間には差異は認められなかった(C:215±27,S:184±60umol/kg/hr).全身蛋白崩壊速度は敗血症群で有意に増加していた(C:628±39,S:758±25,p<0.05).グルタミンの血中産生速度は敗血症により有意に増加し(C:1,959±94umol/kg/hr,S:2,331±76,p<0.05),ロイシン酸化速度(C:413±20umol/kg/hr,S:574±66,p<0.05),グルタミン酸化速度(C:1,089±50,S:1,232±39,p<0.01)も敗血症下では有意に増加していた.ロイシンがグルタミンへ移行する速度およびロイシンがグルタミンを介して代謝される率(C:7.16±0.91%/d,S:11.49±1.12,p<0.05)も敗血症により有意に増加していた.消化管粘膜の蛋白合成速度は空腸,回腸,および近位大腸において有意に増加し,遠位大腸においては増加する傾向を認めたが,筋肉の蛋白合成速度は敗血症により有意に低下していた(C:8.4±1.1%/d,S:5.5±0.9,p<0.05).
以上のことから敗血症下では,1)ロイシン,グルタミン代謝は共に亢進し,エネルギー源としての利用が増加すること,2)ロイシン炭素骨格がグルタミンを介して代謝される経路がロイシンのdegradationの面から重要となること,3)臓器によって,蛋白合成速度の反応が異なり,全身の蛋白合成速度に影響を与えることが判明した.

キーワード
蛋白代謝回転, ロイシン代謝, グルタミン代謝, 敗血症


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