日外会誌. 126(2): 130, 2025
特集
外科医の働き方改革
1.特集によせて
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慶應義塾大学 医学部心臓血管外科 志水 秀行 |
2024年4月に施行された改正医療法に基づく「医師の働き方改革」がスタートした.
これまで,外科医の献身的な長時間労働によって支えられてきた医療体制から,医療労働環境の改善と医療サービスの質の向上を両立させる体制への変化を促す改革である.
労働時間の上限設定は,ひと昔前の概念であれば質の高い医療をめざす方向性と矛盾するように思われたが,医師が健全に働くことは医療の安全性や質を担保する上で必要最低限の条件であり,また,働きやすい労働環境の提供は若手外科医を確保するための重要な要素でもある.全体の労働時間を縮小させつつ質の高い医療を実現するには労働効率の向上が不可欠であり,タスクシェア・シフト,主治医制からチーム制への移行,シフト制勤務形態の導入,IT技術・医療DXの活用など各施設でさまざまな施策がとられている.人材確保のための病院連携や施設集約化などの取り組みも進みつつある.
医療現場における「医師の働き方改革」の取り組みや課題を幅広く共有することは,自施設の施策をより良くするために有用である.さらに,本改革のゴールを労働時間の適正化にとどめず,地域,学会,国などさまざまなレベルでの連携を図り,若手外科医の効率的育成システムの構築,適切な労働対価・インセンティブの獲得,多様性への対応,地域格差の解消など,これまで以上に「外科医が輝きをもって力を発揮できる未来」への環境づくりに活用することができれば,改革の意義は一層大きなものとなる.
本特集では,前半部分で働き方改革に深く携わってこられた各分野(心臓血管外科,呼吸器外科,消化器外科)の先生方から,また,後半部分で女性医師,地域中核病院病院長,医療経営の専門家といった立場から,それぞれの視点で医師の働き方改革の現状,課題,将来展望などを幅広く述べて頂く.
利益相反:なし
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