日外会誌. 126(2): 127-129, 2025
誰もが輝ける外科の未来へ
中高年外科医(綺羅星)が輝くために
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大分県外科医会名誉会長,うえお乳腺外科理事長 上尾 裕昭 |
キーワード
中高年外科医の講演, 講演集の編纂, 地方外科医会
I.はじめに
大分県外科医会は昭和35年(1960年)に誕生し,年に4回の定例会を重ねて2023年12月に250回記念誌が刊行された.3カ月毎の定例会では15~20題の演題が発表され,若手外科医は初めての発表を経験し,中堅外科医にとっては初めての後輩指導(スライドや口演原稿の準備)とともに座長を経験する機会となり,まさに若手外科医の登竜門としての歩みを続けて来た.
一方,壮年~中高年に達した外科医は全国学会の専門分野で発表する機会は増えるが,大分県外科医会のステージに上がることは減り,地元で自分の仕事内容を紹介する機会が無い状況だった.
II.中高年外科医に出番を
2017年に大分県外科医会の会長を拝命した私は,県外の著名な講師による特別講演(60分)を中断し,地元の中高年外科医2~3名のミニレクチャー(20分ずつ)を計画した.「遠くの著名人より近くの外科リーダー」のコンセプトの企画で,本会の理事会(6月)での承認を得て,県下の中高年外科医に「若手に伝えておきたいこと,成功例や失敗例を話して下さい.」と呼びかけた.
初回(2017年9月)のトップバッターは提案者の私が務め,30年前(1987年)に経験した「胃肉腫を疑った粘膜下腫瘍が消えた胃vanishing tumor」の臨床経過と掲載論文を紹介.引き続き猪股教授(大分大学消化器・小児外科),杉尾教授(大分大学呼吸器・乳腺外科)が若き日の取り組みを紹介し,2人の外科教授の講演に若手外科医達は聴き入った.
この日の熱気は2年間続き,このコーナーを楽しみに参加する若手外科医の数も増えた.“後輩のために自分の経験を紹介する”という熱い想いに溢れた講演18題(表1)には,白石教授(大分大学総合外科・地域連携学),宮本教授(大分大学心臓血管外科),三森教授(九州大学別府病院外科)も登壇し,県下の外科系教授5名全員が揃い踏みしたシリーズとなった.

III.発表者の意気込みと視聴者の感想
久しぶりに大分県外科医会に登壇する中高年外科医が,プレゼンテーションの準備に張り切ったことは言うまでもない.「自分の外科医生活を振り返る良い機会になりました.」という感想も多かった.一方,聴講した若手外科医からは「□□病院の◯◯先生のプロフィルや専門領域を初めて知りました.◯◯先生の人柄にも触れたような気がします.」と言う感想が聞かれ好評を博した.
IV.講演集の編纂
各講師の熱意がこもった講演内容の編纂は,大分県外科医会の中で自然の流れだった.論文形式ではなくA4サイズのページの右半分にスライド,その左半分に説明文を並べ,Summaryと講師プロフィルを含めて3ページに1題を収録した.講演集のタイトルは「中高年」という言葉に抵抗感のある人も居たため,「壮年外科医講演集~綺羅星の軌跡~」とした(図1).
講演集は大分県外科医会の全施設に配布して全会員が読めるようにした.また,本会は日本臨床外科学会の大分支部なので全国各県の支部長にも送付し,「自分の支部でも壮年外科医に焦点を当ててみます.」というメッセージをいただいた.

V.おわりに
私がダイバーシティ委員会に招聘された理由は「70歳以上の外科医」としての“多様性”らしいので,どの地方会でも実現可能な「中高年外科医が輝いたミニレクチャー」を紹介させていただいた.このコーナーは一旦終了したが,現在の大分県外科医会(猪股雅史会長)では,「若手外科医へのワンポイントレクチャー」という形で,“地元の外科医”によるミニレクチャーが継続されている.
若手外科医もいずれ中高年になる. “後輩のために発表できる材料”を蓄えてもらって,次世代での中高年外科医・講演を期待したい.
利益相反:なし
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