日外会誌. 126(1): 116-118, 2025
定期学術集会特別企画記録
第124回日本外科学会定期学術集会特別企画(6)「外科学会専門医制度の現状を知り,将来像を語る」
4.新専門医制度の現状と課題:消化器外科志望医に対する意識調査より
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1) 大阪赤十字病院 消化器外科 森 章1) , 寺嶋 宏明2) , 太田 秀一3) , 河本 泉4) , 竹山 治5) , 宇山 直樹6) , 加藤 達史7) , 河合 泰博8) , 北浜 誠一9) (2024年4月20日受付) |
キーワード
新専門医制度, 消化器外科, 意識調査, キャリアパス, ワークライフバランス
I.はじめに
2018年度に開始された新専門医制度の目的は,専門医の質を担保することである.新専門医制度開始後6年目となり専攻医自身は専門研修3年間の見通しが立つようになってきたが,終了後のロールモデルはまだ少ない.
厚生労働省の統計資料「主たる診療科別にみた医療施設に従事する医師数」をもとに日本消化器外科学会が行った解析によると,全診療科の中で消化器・一般外科だけ医師数が減少している1).また,消化器外科医の高齢化が進行し,若手医師の割合が減少している.
消化器外科を志望する若手医師が外科専門研修やキャリアパスについてどのように考えているかを理解することは,消化器外科医をリクルートし育成するために重要である.
II.目的
新専門医制度開始後の消化器外科志望者に対して,外科専門研修やその後のキャリアパスについて意識調査を行い,問題点と改善策について考察した.
III.対象と方法
大阪スペシャルミックス病院群外科専門研修プログラムは,大阪赤十字病院を基幹施設とし,一般病院9施設で構成し,指導医数は75人,NCD年間症例数は6,390例である.新専門医制度開始後,当プログラムを研修中および終了後の消化器外科志望医20人に対して,2023年8月にWebアンケート調査を行い,19人から回答があった(回答率 95%).
IV.結果
回答者の内訳は,卒後年数別に3年目4人,4年目3人,5年目1人,6年目3人,7年目5人,8年目3人,立場別に外科専攻医1年目5人,2年目2人,3年目2人,勤務医10人であった.年齢は中央値30歳,最年少28歳,最年長40歳,性別は男性16人,女性3人であった.
外科専門医資格は研修終了10人全員が取得し,取得時期は卒後6年目8人,卒後7年目1人,卒後8年目1人であった.外科専門医資格を取得するのに苦労する業績で最多は外傷症例/点数で8人42%,次に心臓大血管と末梢血管症例数が各7人37%であった.
外科専門研修中のワークライフバランスは,5段階評価で良い0人0%,やや良い2人11%,ふつう10人53%,やや悪い4人21%,悪い3人16%であり,時間外労働の申請は実労働より少ないとの回答は13人68%であった.時間外労働に該当すると思う業務は(複数回答可),夜間緊急手術開始までの待ち時間が78%,休日に安定した患者の回診が72%と多数である一方NCD症例登録が28%と少数であった(図1A).
消化器外科専門医申請時期(予定を含む)は,卒後7~8年目が14人74%で最多,卒後9~10年目が2人11%,申請しないが1人5%,わからないが2人11%であった.取得するのに不足する業績は(複数回答可),学術(学会発表・論文・教育講座)が69%で最多,必須主要手術の術者経験数が50%であった.内視鏡外科技術認定医の申請予定時期は,卒後7~8年目が3人16%,卒後9~10年目が9人47%,申請しないが2人11%,わからないが5人26%であった.ロボット術者認定はすでに取得したが4人21%,将来取得するつもりが10人53%,取得しないが3人16%,わからないが2人11%であった.大学院進学を希望するが12人63%,希望しないが4人21%,わからないが3人16%であり,予定時期は卒後7~8年目が8人42%,卒後9~10年目が4人21%であった.留学を希望するが8人42%,希望しないが1人5%,わからないが10人53%であった.専門研修終了後キャリアパスで不安な点(複数回答可)は各種専門医資格取得が61%,大学院進学が50%,専門分野選択が44%,次の勤務先が39%,家庭環境が39%であった(図1B).

V.考察
消化器外科医が現状の速度で減少すれば,消化器手術を行える病院が急速に減少する危険性がある.消化器外科医のリクルートと育成は喫緊の問題である.
外科専門医資格を取得するための外傷症例が少なく受講点数で補われている.心臓血管外科領域は経験できる病院が限られている.多領域の症例を経験するのに時間と労力を費やしている.サブスペシャルティ領域を必須ではなく選択制にすることも一案である.消化器外科を志望する専攻医はワークライフバランスが悪いと感じる者が多く,時間外労働を適正化する必要がある.時間外労働と自己研鑽の区別は必ずしも明確ではない.チーム制を導入し夜間休日出勤を削減し,NCDの登録作業は病院業務として事務にタスクシフトを進めなければならない.
消化器外科に関連する多数の学会専門医資格が存在する.これらを取得するためにキャリアパスが遅れる傾向がある.第1段階の外科専門医,第2段階の消化器外科専門医,内視鏡外科技術認定医取得さらに大学院や留学も経験し,第3段階の食道外科専門医,肝胆膵外科高度技能専門医,ロボット手術プロクター,臓器別の学会専門医など資格を取得するのは優に40歳を超える.全員がこの長い険しい道のりを目指すのではなく,多様性を尊重しライフイベントを含めて長期的な人生設計を思い描けるようにしなければならない(図2).さもなければ消化器外科を志望する学生や研修医は減少し続け,途中で進路変更する医師も増加し,消化器外科医療の存続が危ぶまれる.
今回,一般病院のみで構成する外科専門研修プログラムで研修中あるいは終了後の消化器外科志望医にアンケート調査を行った.対象者は単一プログラムの経験者であり,質問者がプログラム管理者だったので,回答に偏りがあったかもしれない.

VI.おわりに
消化器外科志望医の意識調査からキャリアパスの問題点と改善策を論じた.消化器外科医の数と質を維持する全国的な取り組みが望まれる.
利益相反:なし
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