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日外会誌. 126(1): 113-115, 2025

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定期学術集会特別企画記録

第124回日本外科学会定期学術集会特別企画(6)「外科学会専門医制度の現状を知り,将来像を語る」

3.新専門医制度と外科学会専門医制度から見えてくる女性外科医のキャリア継続

市立東大阪医療センター 消化器外科

杢谷 友香子 , 中田 健 , 谷田 司 , 石田 智 , 津田 雄二郎 , 中島 慎介 , 松山 仁 , 山田 晃正

(2024年4月20日受付)



キーワード
新専門医制度, 外科学会専門医制度, 女性外科医, キャリア

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I.はじめに
医師が一定以上のスキルを磨き,国民に良質な医療を平等に提供できることを目的とし,2018年から新専門医制度が開始された.これまでは所定の学会に数年所属し指定された症例を得た後,試験が課されていた.結果として100種類以上もの専門医資格が乱立した.この状況を改善すべく,初期臨床研修を終えたのちに基本領域をマスターし,3年間所定の研修を受け,その上で専門医資格を得て,さらに専門性の高いサブスペシャルティ領域の専門医資格を有するデザインとなった.

II.外科専門医・消化器外科専門医の変化
外科専門医は,これまで修練期間満4年で予備試験,満5年で手術症例数の充足と認定試験が必要であったが,最低3年間の修練と試験となり,修練期間が短縮された.サブスペシャルティである消化器外科専門医に関しては,修練期間が短縮され,診療経験数も減少した.これまで10~20年で取得し取得平均年齢が39歳であったものが,最短8年,34歳で取得可能なデザインとなった.更新要件によって従来と同様の消化器外科診療の高い水準を維持しているため,継続した診療経験が必要である.

III.新専門医制度の問題点
新専門医制度の導入において多くの問題が指摘された.その中で,ライフイベント(妊娠・出産・育児等)による専門医資格の取得や更新が困難,女性医師のキャリア継続が困難という点がある.これを受け,特定の理由のために資格更新が困難な場合は,活動休止や更新の猶予を申請可能となり,またプログラム制からカリキュラム制への柔軟な移行を認めた.制度が新しくなると問題点が浮き彫りになり,よりよい制度に変化するチャンスがある.今後の課題として,研修指定病院での非常勤,クリニックへの研修病院を拡充,ライフイベントに伴う資格の延長方法の検討があげられる.
令和元年度から令和3年度で,研修プログラム辞退者の辞退理由として最多(65.1%)は進路変更であるが,ライフイベントにより3.3%が少なからずとも辞退した1).新専門医制度に変わっても,若年で専門医,サブスペシャルティを取得可能となっても,キャリアとライフイベントは,臨床初期研修から専攻医,専門医の段階において重なる.40%が産まない時代であるが,出生を望む場合はタイムリミットがある.キャリアとライフイベントを秤にかけるのが現実である.
当院における2023年度,2022年度の初期臨床研修医14名の女性医師に実際の声を聞いた(回答率86%).17%のみが新専門医制度は旧専門医制度より優れていると感じ,67%がどちらも変わりない,と感じていた.早くから専門性の高いことができるという期待の声も上がったが,現状は旧制度との違いが全く把握されていなかった.こうした中で女性外科医が生きていくには,ライフイベントに合わせた働き方,効率のいい働き方,継続できる働き方,違和感のないキャリアアップが重要である.

IV.大阪大学外科学講座の取り組み
大阪大学外科学講座,外科専門医研修プログラムは大阪大学附属病院を基幹施設として関連65施設を有する.専門研修指導医は400名以上在籍し,年間約4万件のNCD症例を有し効率のよい研修を目指す.ネットワークは広範でありライフイベントに合わせた研修が可能である.その1例として,各病院ホームページを検索したところ54施設83.1%が保育施設を有し,厚生労働省の令和2年調査報告書の44.1%より多い2).技術認定医取得を目指すために,病院間を超えた研修を行い,専攻医だけでなく指導医への講習も行い,統一した効率のよい資格獲得を目指す連携を行っている.

V.市立東大阪医療センターの取り組み
市立東大阪医療センターは二次医療圏の中核病院である.消化器外科全体として医師の働き方改革に対する取り組みを積極的に取り組んでいる.複数主治医制の導入,休日の病棟当番制の導入,「LINE WORKS」を用いた情報共有を行っている.不在時の対応が容易で,不要な出勤を削減し,専攻医の負担を軽減する.またチームとしての患者の病態把握を行う.問題点としては,責任の所在が不明になる可能性や患者の理解が不十分である,個人情報保護の観点があげられる.ロボット手術の増加とともに時間短縮・手術人数の削減が可能となり,それぞれの負担を軽減している.子育て世代においては,多くの職務免除,休暇が認められているが,実際に利用した臨床研修医・専攻医はほとんどいない.継続した働き方のためにも利用が推奨される.今,消化器外科の専攻医はいわゆるZ世代である.ネットリテラシーを周知し多様な物事の見方をする.「ワークライフバランス」「タイムパフォーマンス」を重視する世代と言われる.働き方改革に準ずる働き方を好む傾向があるともいえる.キャリアは自分に蓄積されるものであり,転職をいとわず,それを留める各施設の魅力づくりが必要である.

VI.日本の現状
日本の女性医師は2023年の医学部入学者が4割を初めて超えた.また共学6大学で入学者の女性割合が5割を超えた3).しかし女性医師の全体に占める割合は23%でOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development;経済協力開発機構)38か国中最下位である4).女性の働きやすさに関しては,OECD主要29か国中27位とその立場は低い4).外科に限らずどの診療科においても男女ともに優秀な人材を求める.優秀な人材を逃していないか.優秀な人材確保の一助として,クオータ制の利用がある.重要なポストにおいて特定の性が実質的に優遇されている状況を背景に,少数派の不利益を是正する.複数の女性外科医を目立つポストにおき,需要と供給を増やす.多様な人材の社会進出を後押しし,環境を整備し労働人口減少に備える.欠点としては逆差別である可能性や,体制を整えても女性比率を増加させるとライフイベントでの代替が必要となってくる.

VII.おわりに
診療科の選択は多様化傾向であり,労働人口の減少に伴い各科で試行錯誤を行わなければならない.あるもの(制度)を活かし,いる人(女性外科医)を活かし,誰(外科医のどの世代)もが働きやすい環境へ繋げる.その先に継続する辞めない女性外科医がある.新専門医制度,働き方改革,Z世代が女性外科医の追い風となることを願う.

 
利益相反:なし

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文献
1) 令和3年度第2回医道審議会医師分科会医師専門研修部会.2024年4月1日. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23711.html
2) 令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況.2024年4月1日. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/20/index.html
3) 令和5年度医学部(医学科)の⼊学者選抜における男⼥別合格率について.2024年4月1日. https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/senbatsu/1409128.htm
4) OECDホームページ.2024年4月1日. https://data-explorer.oecd.org/

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