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日外会誌. 126(1): 119-121, 2025

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定期学術集会特別企画記録

第124回日本外科学会定期学術集会特別企画(6)「外科学会専門医制度の現状を知り,将来像を語る」

5.外科と救急のダブルボード取得を目指した外科救急連携コース

1) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学
2) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌学
3) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科心臓血管外科
4) 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科救命救急・災害医学分野

黒田 新士1) , 安井 和也1) , 岡崎 幹生2) , 小谷 恭弘3) , 枝園 忠彦2) , 小林 純子3) , 中尾 篤典4) , 笠原 真悟3) , 豊岡 伸一2) , 藤原 俊義1)

(2024年4月20日受付)



キーワード
外科, 救急, ダブルボード, 新専門医制度, 地域医療

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I.はじめに
新専門医制度の重要なミッションの一つに地域医療の充実がある.この地域医療を担う専門医として,新専門医制度では総合診療専門医が新たに創設されたが,決して十分な医師数には至っていないのが実状である.さらに,総合診療専門医の研修の大半は内科系であり,外傷などの外科系疾患への対応が困難な場合も多いと思われる.また外科系医師の場合でも,専門外の患者の対応を拒否する場合も多いと耳にする.地域における救急患者の“たらい回し”は大きな社会問題となっており,とくに地域においてこそ,外傷を含めた幅広い疾患に対応できる外科的技量を有した医師(著者らは“総合診療外科医”と呼称)が求められているように感じる.
著者らは,岡山大学を基幹施設とした外科専門研修プログラム「岡山大学広域外科専門研修プログラム(岡大プログラム)」を運営しているが,このような社会的ニーズを鑑み,当大学の救命救急・災害医学分野と連携し,外科と救急のダブルボード取得を目指す「外科救急連携コース」を新たに開設した.
本稿では,岡大プログラムを概説した後,“総合診療外科医”の育成を目指した「外科救急連携コース」に焦点を当て,地域医療の担い手としての外科医の重要性とその育成に向けた著者らの取り組みについて紹介する.

II.岡山大学広域外科専門研修プログラム(岡大プログラム)
岡山大学では2010年より,消化器外科,呼吸器・乳腺内分泌外科,心臓血管外科の外科系3教室が連携して外科マネージメントセンター(外科MC)を稼働し,外科全体として外科を目指す若手研修医の育成・サポートを行う体制を整備してきた1).岡大プログラムはこの外科MCを基盤として作成されたものであり,専攻医側も指導医側も大きな混乱を招くことなく新専門医制度へと移行できており2),これまで13~28名/年の専攻医を受け入れてきている.
研修病院は,基幹施設の岡山大学病院を含む77施設からなり,中国・四国地方から近畿・東海地方まで,1府11県に拡がる広域な医療圏をカバーしている.岡大プログラムでは,専門研修1・2年目は連携施設A(豊富な症例を有する施設群)で症例経験を積み,3年目に6カ月ずつ基幹施設である岡山大学病院と連携施設B(主に地域医療を担う施設群)で研修を行うコースを「基本コース」としているほか,この基本コースでは専門研修と地域勤務の両立が困難な岡山県地域枠医師を対象とした「地域枠コース」を設けており,この方向からも地域医療を担う外科医の育成に取り組んでいる3)

III.ダブルボード
新専門医制度において,基本領域専門医取得後にもう1個の基本領域専門医の取得を目指すこと(ダブルボード)に関しては,制度開始当初は推奨されていなかったが,より幅広い知識と技能を有する医師の育成がより効果的で効率的な地域医療提供につながるのではないかとの見解から許容されるようになり,いくつかの組み合わせにおいては,(3年+3年の計6年ではなく)後半の専門研修期間を1年短縮した計5年で取得できるような配慮が行われてきている.
外科と救急のダブルボードに関しても,外科領域あるいは救急科領域の専門研修カリキュラム制整備基準が策定されており,希望すれば後半の専門研修をプログラム制ではなくカリキュラム制で行い,最短2年で修了することが可能となっている.本件に関しては,2023年1月に日本外科学会のホームページにも掲載されており4),近年の新専門医制度に関連する重要なトピックスの一つとなっている.

IV.外科救急連携コース(図1
地域医療においては特に,“救急を断らない医師”が求められている.著者らはこの観点からも,地域医療に求められる医師像として“総合診療外科医”を重要視しており,2018年の新専門医制度開始当初から外科と救急のダブルボードは十分に意義のあることではないかと考えていた.当大学の救命救急科医師も,昨今の過度な専門性追求の弊害として,特に地域病院における,専門外患者の診察拒否に大きな問題を感じていたこともあり,外科と救急のダブルボード取得を目指した研修に関し賛同を頂き,合同で「外科救急連携コース」を新設する運びとなった.
2020年より具体的に準備を始め,外科と救急双方のプログラムに属する連携施設の先生方に本コースの意義を説明するとともに,外科と救急合同で医学生や初期研修医を対象に本コースの説明会を行い,リクルート活動を開始した.通常の外科あるいは救急プログラム所属の専攻医と区別化するため,本コース所属の専攻医は外科と救急の双方が充実している施設で研修を行えるよう配慮している.2021年より「外科救急連携コース」の運用を開始し,2021年に1名(A医師,救急より研修開始),2022年に1名(B医師,外科より研修開始)が本コースに所属し,現在2名が研修を行っている.
本コース開始当初は,ダブルボード取得までに3年+3年の計6年を想定していたが,先述の通り,前半に救急科の専門研修を行う場合,2年目までに申請書にて外科とのダブルボード取得の意思表示を行った場合,外科の専門研修を1年短縮し,最短計5年で外科と救急のダブルボードを取得することが可能となった(反対の研修順でも最短5年で取得可能).A医師は救急科研修中の2年目までにダブルボード取得の意思表示を行い,現在カリキュラム制で外科専門研修を行っており,5年でのダブルボード取得を目指している.また,B医師は現在外科専門研修3年目で,来年度から救急科専門研修に移行予定である.

図01

V.おわりに
地域医療における“総合診療外科医”の重要性と,その育成を目指して著者らが取り組んでいる「外科救急連携コース」について概説した.ダブルボード取得後の維持・更新の問題も囁かれているが,当該医師と十分に意思疎通を図り,組織として対応することで十分解決可能と考えている.本コースを修了した医師が,“総合診療外科医”として地域医療に貢献する姿を思い描きながら,本コースの更なる充実を図りたい.
謝 辞
岡大プログラムの運営に多大なるご尽力を頂いている担当秘書の飯田まみ様に深謝申し上げます.

 
利益相反:なし

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文献
1) 菊地 覚次 , 吉田 龍一 , 黒田 新士 ,他:情熱・努力を継続できる外科教育 外科マネージメントセンターによる情熱のある外科医教育・育成システム.日外会誌,122(6):680-682,2021.
2) 黒田 新士 , 吉田 龍一 , 池田 宏国 ,他:新専門医制度の開始により見えてきたその現状と課題 多医療圏にまたがる広域外科専門研修プログラム運営の現状と課題.日外会誌,120(5):601-603,2019.
3) 黒田 新士 , 吉田 龍一 , 池田 宏国 ,他:外科系新専門医制度のあるべきグランドデザイン 地域枠医師に対する外科専門研修のあり方―充実した地域医療の実現を目指して―日外会誌,122(1):83-85,2021.
4) 日本外科学会ホームページ.2021年1月11日. https://jp.jssoc.or.jp/modules/info/index.php?content_id=306

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