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日外会誌. 125(5): 451, 2024

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手術のtips and pitfalls

no-touch SVG(大伏在静脈グラフト)のtips and pitfalls

「no-touch SVG(大伏在静脈グラフト)のtips and pitfalls」によせて

千葉大学 心臓血管外科

松浦 馨



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冠動脈バイパス術(CABG)において動脈グラフトの有用性は広く認められている.一方で,実臨床では大伏在静脈(SVG)グラフトは今でも重要なグラフト材料である.その理由としてSVGグラフトは吻合手技がやりやすく,グラフト採取も容易で,短時間で採取可能であり,長さの制限もなく採取できるという点が挙げられる.SVGは外科的には非常に使いやすいグラフト材料であり,心臓血管外科以外でも使用される優れたグラフトの一つであることは間違いないであろう.
しかしSVGグラフトの最大の問題点は動脈グラフトと比べて長期グラフト開存率が劣るという点である.このSVGグラフトの長期開存率を向上させるよう試みられてきた一つの取り組みがSouzaらのグループが提唱したno-touch SVGという採取法である.no-touch SVGとはSVGにはできるだけ触らずに,周囲の脂肪組織をつけたままのpedicleとして採取し,シリンジによる拡張もせずに使用するグラフト採取法である.Souzaらは16年で83%という非常に良好な遠隔開存率を報告している.また橈骨動脈グラフトとの無作為前向き臨床試験も行い,3年後のグラフト開存率が橈骨グラフト82%に対してno-touch SVGは94%と非常に良好な成績だったと報告した.
一方でSVGグラフト採取は心臓血管外科トレーニングの最初にマスターする手技であるため,alternativeな採取法へのハードルは高く,まだまだ浸透していない状況である.今稿ではno-touch SVG採取について古くから取り組んでこられた先生,あるいは採取法に工夫を講じて実臨床で実践されている先生の,二名の先生方にtipsとpitfallを紹介していただき,本学会の先生方に新たな知見をもたらしていただけることを祈念する次第である.

 
利益相反:なし

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