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日外会誌. 125(5): 390-392, 2024

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誰もが輝ける外科の未来へ

地方大学外科学教室における人材育成およびダイバーシティへの取り組み

大分大学医学部 消化器・小児外科学講座

二宮 繁生 , 猪股 雅史

内容要旨
「誰もが輝ける外科の未来」を実現するには,人材確保,人材育成,多様性の受容(ダイバーシティ&インクルージョン)が重要である.本稿では地方大学外科学教室としての取り組みを紹介する.

キーワード
地方大学, 人材育成, ダイバーシティ

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I.はじめに
外科医減少が懸念される中,地方大学外科学教室としては地域に根差し世界を目指す外科医の人材確保・人材育成が重要である.一方で大都市集約化の時代を迎える中,特に地方大学では女性外科医を始めとしたダイバーシティを配慮した環境整備が求められている.
本稿では,当講座が取り組んでいる人材確保,人材育成およびダイバーシティへの取り組みについて報告する.

II.人材確保
多様な働き方を受容する環境を作るには人材確保が重要である.当講座では積極的に外科医リクルート活動を行ってきた.外科医リクルートに重要なのは,「外科の魅力」を伝えることであり,教室では平成27年より医学科5年生,6年生を対象とし学生教育カリキュラムにアニマルラボを導入した.当講座での実習を選択した年間5グループ(各グループ5名程度)の学生に中動物を用いた実習を行っており,現在まで約150名の学生がアニマルラボを経験している.またコロナ禍では飲食を伴ったリクルート活動が制限されたことから,教室内に釣り部やゴルフ部を作り,外科医との積極的な交流を行うことで,近年では新規入局者が増加している(図1).

図01

III.人材育成
当講座では,独自の研修指導医長(通常,准教授もしくは講師)を配置し,専攻医の経験症例数や業績などを講座で把握する取り組みを行っている.それらの調査結果に基づき翌年度の人事異動を行っており,後期研修期間に過不足ない経験が出来るようにしている.これらの取り組みにより,平成29年の新専門医制度施行後は全専攻医が最短で外科専門医を取得している.外科専門医取得後は各々の希望に応じるものの,多くの教室員が大学院に進学し学位を取得,また各種サブスペシャルティの資格を取得している.

IV.ダイバーシティ&インクルージョン
現在教室には,連携病院を除き3名の女性外科医が所属している.各々臨床医,研究医,大学院生として活躍している.1名の女性外科医(平成14年卒,卒後23年目)は,ベッドフリーの研究医を希望したため,現在は教室で研究室長として研究を行うだけでなく,大学院生の研究指導や学生教育などに特化した業務を行っている(図2).また当講座には宇宙飛行士を目指す医師が所属しており,トレーニングや講習に時間と費用を要すため,希望する環境での勤務を受容している(図3).

図02図03

V.おわりに
地方大学外科学教室として当講座が行っている取り組みを紹介した.「誰もが輝ける外科の未来」実現のためには,①人材確保による人的余裕の確保,②確保した人材の効率的な育成,③多様な働き方の受容に伴うダイバーシティ&インクルージョン促進が重要である.

 
利益相反:なし

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