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日外会誌. 124(4): 368-373, 2023

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手術のtips and pitfalls

単孔式胸腔鏡手術における左上葉切除時のtips and pitfalls

聖マリアンナ医科大学 呼吸器外科

本間 崇浩 , 佐治 久



キーワード
単孔式, 胸腔鏡下手術, Uniportal VATS, 肺葉切除術

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I.はじめに
単孔式胸腔鏡下手術(Uniportal video-assisted thoracoscopic surgery; Uniportal VATS)は4cm以下の切開創1カ所から,器械操作と検体摘出を行う手術アプローチである1)3).Gonzalez Dらが2011年に単孔式胸腔鏡下肺葉切除術を報告して以来1),東アジアを中心に世界で広く実施されるようになった.現在ダブルスリーブのような高度な技術を要する局所進行癌,肋間ではなく剣状突起下に切開を置く単孔式,da Vinci (Intuitive Surgical Inc.)を用いた単孔式胸腔鏡下手術まで広く応用されている.
単孔式胸腔鏡下手術と,従来の多孔式VATS(以下,conventional VATS),ロボット支援下手術の違いは,大きく3点(創,器械,侵襲性)ある.Conventional VATSやロボット支援手術では,肋間に5~15mm程度の切開を3~5カ所置き,ポート経由で器械を操作する.検体が大きい場合には摘出時に創部を延長する必要がある.一方,単孔式胸腔鏡下手術は,ポートではなく創縁保護材を用いること,彎曲した器械を使用することが特徴である.単孔式胸腔鏡下手術の手術侵襲は,開胸だけでなく,conventional VATSと比較しても,疼痛の軽減,少ない出血量,短い手術時間,合併症の低下,入院期間の短縮が複数報告されている.

II.アプローチと手順
単孔式胸腔鏡下手術は肋間アプローチと非肋間アプローチに大別され,前者は更に三つ(前方,側方,後方),後者は二つ(剣状突起下,季肋下)に分類される.非肋間アプローチの利点は,肋間を経由しないため術後神経障害性疼痛が発生せず,大きな腫瘍でも肋間に制限されずに摘出できることが利点である.剣状突起下アプローチは主に前縦隔腫瘍切除に実施されるが,肺切除術を実施する施設もある.いずれの非肋間アプローチも,肺門までの距離,心臓による操作の制限,緊急開胸時のアクセスが欠点である.一方,肋間アプローチはターゲットまでの距離と,術者や施設の好みにより選択される.前方アプローチは後方視野,後方アプローチでは前方視野の確保が難しい傾向にある.筆者は俯瞰的視野を得られる側方アプローチを好んで実施している.いずれのアプローチでも手順が重要で,手前から奥へと操作する意識が,操作空間の確保につながる.なお,肋間アプローチの選択と治療成績の影響は定かではない.単孔式胸腔鏡下手術でも施設や術式によってアプローチに差があることに留意いただきたい.
本稿では,側方アプローチによる単孔式胸腔鏡下左上葉切除術について解説する.

 
利益相反:なし

図1図2図3図4図5

図01図02図03図04図05

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文献
1) Gonzalez D, Paradela M, Garcia J, et al.:Single-port video- assisted thoracoscopic lobectomy. Interact Cardiovasc Thorac Surg, 12: 514-515, 2011.
2) Sihoe ADL: Uniportal Lung Cancer Surgery: State of the Evidence. Ann Thorac Surg, 107: 962-972, 2019.
3) Bertolaccini L, Batirel H, Brunelli A, et al.: Uniportal video-assisted thoracic surgery lobectomy: a consensus report from the Uniportal VATS Interest Group (UVIG) of the European Society of Thoracic Surgeons (ESTS). Eur J Cardiothorac Surg, 56: 224-229, 2019.

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