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日外会誌. 124(4): 367, 2023

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手術のtips and pitfalls

「単孔式胸腔鏡手術とロボット支援下手術における左上葉切除時のtips and pitfalls」によせて

藤田医科大学 医学部呼吸器外科学講座

松田 安史



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呼吸器外科の手術の歴史は開胸手術から始まり,1992年に自動縫合器が発売され1994年頃から胸腔鏡下肺切除が行われる様になった.2000年には胸腔鏡下手術での肺悪性腫瘍手術が保険適応となり,肺癌に対する胸腔鏡下手術の割合も増加した.2014年日本胸部外科学会にて胸腔鏡下手術は主たる手技を8cm以下の創から行う手術と定義され,胸腔鏡併用では手術を8cm以下の創で行うようになった.現在は3ポートで直視を併用せずモニター視のみで手術を行う完全胸腔鏡下手術(Complete VATS:video assisted thoracoscopic surgery)が主流となり,直視を併用する胸腔鏡手術はHybrid VATSとして区別するようになった.胸腔鏡下手術は,手術技術や機器の開発が進んで,1ポート(単孔)で行われる胸腔鏡下手術(Uniportal VATS)に移行しつつある.
一方で,手術支援ロボットであるIntuitive Surgical 社のDa Vinciが,1999年にアメリカで発売され,2009年にDa Vinci Sによる手術が厚生労働省で認可された.以後Da Vinciの改良が進み,Da Vinci Si,Da Vinci X,Da Vinci Xiと次々バージョンアップされデバイスの改良も行われた.2018年4月には肺癌と縦隔腫瘍に対するロボット支援下手術が保険収載され,多くの病院でDa Vinciを用いた呼吸器外科の手術が導入されることとなった.新しい手術支援ロボットの開発は多くの企業で行われており,今後は様々な手術支援ロボットが導入されていくことであろう.
呼吸器外科で新しい手術手技を導入する場合には解剖学的な理由から右肺の手術から行われることが多い.左上葉の手術は,他の肺葉に比較して処理しなければならない血管の数が多く術後合併症のリスクも高いため,ある程度手術手技に慣れてから行われる.今回単孔式胸腔鏡下手術とロボット支援下手術における左上葉切除におけるtips and pitfallsについて,それぞれのフロンティアの先生に執筆をお願いしコツやポイントを学ばせていただく.今後の呼吸器外科の手術では,海外ではすでに行われているように単孔式ロボット支援下手術が導入されていくことになるであろう.

 
利益相反:なし

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