日外会誌. 124(2): 209-212, 2023
手術のtips and pitfalls
生体肝移植における胆管胆管吻合のtips and pitfalls
広島大学大学院 医系科学研究科消化器・移植外科学 小林 剛 , 大段 秀樹 |
キーワード
生体肝移植, 胆管胆管吻合, 胆道再建
I.はじめに
生体部分肝移植における胆道再建は,胆管-胆管吻合(duct-to-duct anastomosis)と胆管-空腸吻合(Roux-en-Y hepaticojejunostomy)に大別される.胆管病変のないレシピエントには,グラフト胆管とレシピエント胆管による胆管胆管吻合を選択することが可能であり,特に成人間生体肝移植で広く行われている.空腸を用いた胆管空腸吻合と比較した場合,胆管胆管吻合は胆汁流出路が生理的で,十二指腸乳頭部Oddi括約筋機能が保たれ逆流性胆管炎が生じにくいこと,消化管吻合を伴わないこと,術後に内視鏡的アプローチが可能であること,と様々な利点があるが,一方で術後胆管狭窄が多いとされる1).
術後胆管狭窄の原因として,冷阻血時間や肝動脈血流障害,吻合胆管の数,胆管縫合不全などが挙げられている.これらに対する対策として,胆管から動脈の剥離を極力行わない胆管切離法や,肝門部グリソンレベルでの切離法などの改良,あるいは拡大鏡や顕微鏡を用いた吻合などが報告されている.胆管胆管吻合の利点を活かすためにも,術後胆管狭窄を来さない精緻な吻合が求められる.
筆者らの施設では胆管胆管吻合を第一選択にしており,その基本的方針を記述する(図1)2)3).胆管切離では,ドナー,レシピエントともに胆管血流に配慮して,最小限の剥離操作で熱凝固を排除した肝門部操作を行い,胆管は鋭的に切離し,出血点は6-0血管縫合糸で縫合止血する.吻合は5倍拡大鏡,6-0モノフィラメント吸収糸を用いて,前壁,後壁ともに外糸結節縫合で行い,胆管外瘻ステントチューブを経胆嚢管的に挿入する(図2).ドナーのグラフト胆管には様々なバリエーションがみられ,特に右肝グラフトの場合には複数の胆管孔になることが多い.グラフト胆管2孔の場合,同一のグリソン鞘内であればそのまま1孔として吻合し,形成は行わない(図3a).グラフト胆管が異なるグリソン鞘として2孔の場合には,レシピエント左右肝管とそれぞれ吻合する(図3b).
胆道合併症は,術後早期の致命的合併症には繋がりにくいが,一旦生じれば治療に難渋し,QOL低下のみならずグラフトロスにつながることもあり,克服すべき課題の一つである.
利益相反:なし
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