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日外会誌. 124(2): 208, 2023

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手術のtips and pitfalls

「生体肝移植における胆道再建tips and pitfalls」によせて

国際医療福祉大学三田病院 消化器センター

篠田 昌宏



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外科手術は,切除に再建手技を伴うと難度が高まりますが,この再建手技を巧みに遂行することが患者治癒の第一歩であることは間違いありません.今回,肝胆膵外科手術でしばしば必要となる胆道再建手技(胆管胆管吻合,胆管空腸吻合)を生体肝移植手術から学ぶべく「生体肝移植における胆道再建のtips and pitfalls」を企画しました.
生体肝移植は国内累計実施数が10,000例を突破し,一見成熟期に入ったかにみえます.一方,近年の年間実施数は300例台,2020年に肝移植を行った施設は全国で29施設にとどまり限られた外科医による医療の性格は否定できません.そんな中,2022年4月に外側区域グラフトの腹腔鏡下ドナー手術が保険適用となり,ドナー,レシピエントの胆道手技は改めて注目されています.海外から,同手術で採取されたグラフトを用いたレシピエントでは胆管合併症が増加するとの報告がされているからです.生体部分肝の胆管径は非常に細径で,多穴となることも稀ではありません.腹腔鏡下ドナー手術時代の外科医には,採取されたグラフト胆管を確実に吻合する技術が求められています.
移植よりはるかに実施数が多い癌に対する肝胆膵手術においては,切除限界への挑戦が多穴胆管を再建する機会を増加させる一方,働き方改革時代が合併症を起こさない手術を必要としている現状も理解しなければなりません.様々な困難な条件でも確実に胆道再建をすることは切除外科でも置換外科でも変わらない目標です.
本企画の執筆をお願いした広島大学の小林剛先生,慶應義塾大学の長谷川康先生は,レシピエント手術を含む数多くの肝胆膵手術を手掛ける胆道再建のエキスパートです.肝移植手術に従事する移植外科医にばかりでなく,肝外胆管切除を伴う拡大肝切除手術など各種高難度手術を手掛ける外科医にも役立つようなtips and pitfallsをご執筆いただくようお願いしました.これから胆道再建に挑戦する会員,すでに複数の執刀経験を持つ会員,自身の手技を確立した会員など様々な立場の会員に閲読いただき,今後の手技工夫に役立てていただければと願う次第です.

 
利益相反:なし

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