日外会誌. 122(2): 194, 2021
手術のtips and pitfalls
「腹腔鏡下直腸低位前方切除術におけるtips and pitfalls」によせて
東北大学大学院 消化器外科学 大沼 忍 |
大腸癌の手術は,従来の開腹アプローチから,腹腔鏡やロボットによる低侵襲アプローチに移行しつつある.日本内視鏡外科学会のアンケート調査は,大腸癌に対する腹腔鏡手術の比率が,2009年の36.7%から1),2017年は72.2%2)まで増加したことを明らかとした.また,大腸癌に対する腹腔鏡手術の3分の1は直腸癌が対象であり,2017年は約1万件という数多くの腹腔鏡下直腸手術が施行されている2).
今回のテーマは,「腹腔鏡下直腸低位前方切除術(Low anterior resection:LAR)におけるtips and pitfalls」である.LARは下部直腸癌に対する標準術式の一つである.LARの合併症の一つに縫合不全があり,各施設で縫合不全を予防するための努力がなされている.今回は二人のエキスパートに執筆をお願いした.一人目は名古屋大学の上原圭先生で,タイトルは「脾弯曲授動法」である.LAR時の再建において,吻合部に緊張がかかり縫合不全が危惧される場合,脾弯曲授動が必要になることがある.腹腔鏡下の脾弯曲授動に不慣れな施設では授動操作に手間取ることがあり,日常的に脾弯曲授動を行っている上原先生に解説していただいた.二人目は,岩手医科大学の大塚幸喜先生で,タイトルは「脾彎曲授動を必要としないIMA low ligation法」である.脾弯曲授動をせず,再建結腸の血流を重視し左結腸動脈を温存して下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery:IMA)を処理し再建する方法について解説していただいた.いずれの方法も縫合不全を防ぐための対策であり,腹腔鏡下直腸低位前方切除術を行っている会員の皆様の参考になれば幸いである.
利益相反:なし
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