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日外会誌. 126(3): 275-281, 2025
特集
進行胃癌治療の現状
8.周術期の栄養管理
内容要旨
進行胃癌患者においては,癌の進行に伴う消化管狭窄がしばしば認められ,経口摂取が困難となる場合がある.また,担癌状態に起因する全身的な影響から,診断時点ですでに栄養不良の状態に陥り,治療を開始する症例も少なくない.術前の低栄養やサルコペニアは,術後合併症の発症や長期予後の悪化に寄与する可能性が指摘されており,その重要性が認識されつつある.このような背景から,術前の栄養状態を改善するために,静脈栄養や経口・経管を利用した腸管栄養の介入が行われてきた.
一方で,胃切除後には食事摂取量の減少や消化・吸収機能の変化が栄養状態をさらに低下させることが知られている.これに伴い,体重および筋肉量の減少が生じることがあり,これらが術後治療の忍容性を低下させるだけでなく,長期的な予後の悪化にも関与することが示唆されている.このような問題に対処するため,周術期における栄養介入の有効性が注目されてきた.さらなる治療成績の向上を目指し,栄養剤服用のアドヒアランス向上を図る取り組みや,運動療法を併用することの有用性,術後の体重減少を予防するための再建術式の工夫が提案されている.このように,進行胃癌における周術期の栄養管理は,治療成績の向上や患者の予後改善において極めて重要な役割を果たす.本稿では,近年の胃癌治療における栄養管理の意義とその進展について,文献的考察を交えて概説する.
キーワード
胃癌治療, 栄養管理, 周術期, サルコペニア
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