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書誌情報]
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日外会誌. 126(1): 38-45, 2025
特集
少子化時代のこどもの外科医療のあり方
7.肝臓移植領域からみたこどもの外科医療のあり方
内容要旨
日本では晩婚化と未婚率の増加により少子化が進行し,2023年の出生者数は約72.7万人,合計特殊出生率は1.20と低下している.政府は1994年以降,様々な少子化対策を講じてきたが,解決には至っていない.少子化で子供の数が減少する一方,特定の医療施設に患者が集中することで,小児医療の需要は高まっている.小児医療は不採算性が高く,診療報酬制度で赤字を計上する医療施設が多く,小児病床の縮小・閉鎖も進んでいる.
国立成育医療研究センターは2005年に小児肝移植術プログラムを開始し,2024年7月までに872例の肝移植を実施してきた.小児の肝移植は生体ドナーからの臓器提供が主体で,脳死肝移植は全体の3.9%に過ぎず,臓器提供をいかに増加するかが課題である.少子化の影響で外科系手術件数や肝移植症例数の減少が懸念される中,当センターは良好な移植成績と情報発信により症例の集約化・若手育成に成功している.
少子化進行により小児肝移植適応患者数が減少する中で,持続可能な医療体制を維持するためには,脳死臓器提供の啓発や移植施設の機能的集約化・収益化が重要であり,若手医師にとって魅力ある職場環境を提供することが必要である.
キーワード
小児医療, 女性医療, 肝移植, 少子化, 移植外科
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